元運転士が語る「鉄道業界の飲酒」実情と課題 肝機能に個人差、不規則な勤務時間も遠因

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また事業者によってはすでに社内規定において0.09mgよりも低い数値を設定しているところもある。程度の差があるとはいえ各社とも自主的にアルコールに対する規制強化を進めており、鉄道事業者の飲酒に対する危機意識は随分と高まっている。

鉄道のような公共交通事業従事者においては、不規則な勤務体系であることもアルコール問題との因果関係があるといえる。早朝や深夜の勤務は睡眠不足・自律神経の不調などをもたらすことが多い。東洋経済オンライン2018年10月14日付記事(実録!「禁酒」すると睡眠はどう変わるのか)でもストレス解消や疲労回復のためにアルコールを摂取するという行動が記載されている。

鉄道会社でいえば、助役ともなり事務仕事を兼務することの多い年代となれば、乗務以外のことが余計ストレス・疲労となり、その解消のために前日に深酒をする、という構図にもなりかねない。つまり、鉄道の勤務体系自体がこのようなアルコールを摂取する環境を生み出しやすいともいえる。アルコールに頼らない疲労回復・ストレス解消法や自制心のコントロールも大前提としてもちろん必要であるが、背後的要因として鉄道をはじめとした事業従事者特有の問題があることも一考を要するだろう。

年を取るとアルコール分解能力が低下

また、平均年齢が40歳以上になる鉄道運転士であるが、年を取るにつれて20~30代と比較して肝機能の低下によりアルコール分解能力が低くなることもある。社内規定で「勤務前××時間以内の飲酒を禁止」等基準を設けている場合もあるが、これも個人差や摂取量により分解スピードは異なるので、一概にいえたものではない。私が現役の運転士だった頃は、アルコール問題への対策方法として個人レベルで「安全策をとって勤務前日は禁酒する」ことで自己防衛を図っていた。

酒気帯び状態での乗務はきっとまれなケースで、ほとんどの航空会社パイロットや鉄道運転士は飲酒に対する問題意識を強く持っているだろうと信じたいが、会社の中に酒気帯び自体を黙認する環境があったのであれば、業界として大きな問題だ。今回のジェットスターの飲酒問題は、欠航便が出て初めて明るみに出た。

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