エクアドル、なぜほぼ全国民の情報漏れたのか 元ウィキリークスのアサンジ氏も被害に

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エル・パイス紙によると、イギリス警察がアサンジ氏を逮捕した時点から、エクアドルでは約4000万件の情報攻撃を受けたことを、マリア・パウラ・ロモ内相は明らかにしている。こうした中、セキュリティ対策強化に乗り出していたが、その矢先に今回の大規模情報流出が起きてしまったというわけだ。

こうした背景から、コレア前大統領の支持者だったノバエストラット経営陣の2人が情報流出に意図的に関与したのではないか、という臆測も浮上している。ただし、エクアドルの警察当局が目下、事件の捜査中で、なぜこのような情報の大量流出が起きたのかは明らかになっていない。

エクアドル政府は9月11日をもって情報の流出は解除されたとしている。しかし、それまでにすでに流出している情報量についてはその規模はまったく不明だとしている。前述の通り流出したのは、姓名、社会保障番号、住所、誕生場所、婚姻状況、給与、携帯電話番号、などから始まって車の車種や購入日やプレートナンバー、給与、勤務先など多岐に及ぶ。また、国立社会保障銀行の口座残高なども流出している。

個人情報保護強化に向け12億円投入へ

そこから懸念されることはいろいろとある。迷惑メールや電話に始まって、フィッシング詐欺や身分証明の盗用、所有者になりすました車の盗難、企業スパイ活動、銀行口座へのアクセス、偽装クレジット詐欺、誘拐など挙げたらキリがない。こうした場合、狙われやすいのは富裕層だ。

エクアドルではこれまでも、個人情報保護法がないことが問題視されてきたが、今回のことを受けて、緊急に同法が議会に提出された(南米で個人情報保護法がないのは、エクアドル、ボリビア、ベネズエラの3カ国のみ)。今回の件を受け、エクアドル政府は国民の情報保護のシステム構築に今後1100万ドル(12億1000万円)を充てるとしている。

今回の事件は、本来であれば政権崩壊を導くのに十分なほどの出来事であるが、今のところその様子はうかがえない。これから情報流出の原因が解明されるようになった時点で新たな動きがあるのかもしれない。

白石 和幸 貿易コンサルタント

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しらいし かずゆき / Kazuyuki Shiraishi

1951年生まれ、広島市出身。スペイン・バレンシア在住40年。商社設立を経て貿易コンサルタントに転身。国際政治外交研究も手掛ける。著書に『1万km離れて観た日本』(文芸社)。

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