「バリアフリー新大臣」駅の対策へ本気度は? ホームドア設置駅への拡充へ「法改正も検討」

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公共交通と公共施設で「交通バリアフリー法」と「ハートビル法」に分かれていた法律も2018年に「バリアフリー新法」という形で統合。内容も駅から建物への連続した移動を考えたバリアフリー化を促進する内容に拡充した。公園なども対象となった。東京2020オリンピック・パラリンピック大会を目前に機運も高まり、関係者にはあとは目標を達成していくだけ、という油断を赤羽氏に突かれた格好だ。

現状のバリアフリーは、赤羽氏の目には十分なものとは映らなかったようだ。「バリアフリーの設備は20年間でそうとう進んできた。ただ、利用者の多いところのほうで整備が進んでいるため、西日本より首都圏のほうが先行しているということが、国会でも議論になった」

鉄道事業者からすると、時間や費用の制約からどうしても優先順位をつけて整備をしなければならない、そのためホームドアの設置も、転落事故の半数が集中する1日10万人以上が利用する279駅に2020年度までの集中整備を求めることで落ち着いた。だが、そのうち112駅は2020年以降に繰り越され、さらに74駅は2025年度以降いつ設置されるか明確ではない。

同省鉄道局は、「優先すべき駅に明確な期限を切ることで事業者に確実な整備を迫った」というが、これだけ遅れてしまうと、何のために期限を掲げたのかがわからない。

理想はシームレスな移動

赤羽氏がバリアフリーに尽力し始めた頃の思いは、今もそのまま通じる課題だ。「(設置が進まないのは)なぜなのかと思い気がついたのは、バリアフリーの施設を整備しても乗降客がそれで増えるわけではない。古い駅だと設置する場所もない。任された担当者は、つらい立場だったかもしれないが、そういう状況のままでいいのかなと。何とかしなければならないと思ったわけです」

赤羽一嘉氏は1958年5月生まれ。慶応大学法学部を卒業し、三井物産に就職。神戸から衆議院選に出馬し、当選後にバリアフリーを議員活動のテーマの1つとした(筆者撮影)

さらに、赤羽氏は今後、ハード以上にソフト対策が求められるという。例えばバリアフリー新法は、高齢者や障害者のシームレスな移動を理想にする。現状では駅構内での障害者は駅員が誘導するが、駅から駅ビルに行く場合、駅からバスに乗る場合の誘導は、誰が担うべきか。現実は整理されていない。

新法はバリアフリーを考えるうえで、交通事業者と障害者らとの協議を盛り込んだが、よりいっそうの話し合いが必要で、これらの例は、バリアフリーのハードより、どう運用するかというソフトに関わる問題だ。

バリアフリー化の恩恵は、事業者を含むすべての関係者、社会全体にもたらされる。誰もがシームレスな移動が可能になれば、駅員が介助する必要もなくなり、仕事量が削減し働き方改革にもつなげられる。

バリアフリー事業には補助金が出る。ホームドア設置への補助金も2011年の目白駅の視覚障害者転落事故後に制度化された。鉄道事業者、国、地方で3分の1ずつの負担だが、すべての未設置駅に設置するほどの充分な予算は確保されていない。バリアフリー新大臣の登場で、ホームドアの設置は加速するのだろうか。国交省の本気度が計られている。

【2019年10月2日19時00分 追記】記事冒頭の写真を差し替えました。

中島 みなみ 記者

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なかじま みなみ / Minami Nakajima

1963年生まれ。愛知県出身。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。行政からみた規制や交通問題を中心に執筆。著書に『実録 衝撃DVD!交通事故の瞬間―生死をわける“一瞬”』など。

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