渋谷駅新ビル、畑違いの男が生んだ「目玉施設」 11月開業、ベンチャーの梁山泊を目指す
アイデアを固めるために、これはと思う講演会やイベントに顔を出して、情報収集に努めた。会の終了後には、学者からベンチャー系のビジネスマンまでさまざまな登壇者の元に駆け寄り、「30分でいいので話をしたい」と直談判した。
面談を重ねるうちにわかってきたことがいくつかある。例えば近年は巨額の投資マネーが創業初期や成長期のベンチャー企業に殺到しており、大企業の中でもアクセラレータープログラムやコーポレートベンチャーキャピタルを作ってこうした企業を支援する流れが生まれている。
だが、起業の準備段階である「シード」と呼ばれるプレーヤーを支援する仕組みが少ないのだという。
そもそもベンチャービジネスは失敗するリスクが高いが、中でもシードはことさらリスクが高く、敬遠されがち。しかし、シード、つまり種が芽を出さないと花は咲かない。
そこで野村さんは思いついた。「渋谷は多様な人が集まる場所。ベンチャーの生態系に足りないものを補うことはできるんじゃないか」。
「共創」を生む仕組みづくり
最近は事務所や会議室を共有するコワーキングスペースが人気で、フリーランスや起業家の多くが利用している。渋谷にも多数のコワーキングスペースが生まれている。
日本のコワーキングスペースの状況を見ていると、一人ひとりが黙々と作業をしている。一方でアメリカでは、コワーキングスペースで仕事をする人同士で横のつながりが生まれて、新たなチームが次々と誕生している。「アメリカのように“共創”を生む仕組みを作りたい」。目指す方向が見えてきた。
企業、行政、学生……。肩書や立場を超えてさまざまな人が交じり合うことで新しい視点を構築する場を作る。ベンチャービジネスに限らず、社会を変えたいと考えている人を応援する仕組みを作る。そして、場を提供するだけでなく、アイデア創りを支援するプログラムもそろえる。
さらに「未知の可能性に挑戦するプロジェクト」を募集し、採択されたチームにはコワーキングスペースを3カ月間無料提供することにした。応募条件は3人以上のグループであること。まさに共創を意識した仕組みで、年4回実施する。
「何をやりたいのかが明確に決まっていない人にもぜひ来ていただきたい」と野村さん。さまざまなイベントを仕掛けて、やりたいことを見つけてもらい、同じ問題意識を持つ人同士がチームを作って、新しいプロジェクトが生まれればいいという期待がある。
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