民意不在の政治空白解消を望む国民、待ち望む早期の「バカヤローの解散」

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民意不在の政治空白解消を望む国民、待ち望む早期の「バカヤローの解散」

塩田潮

 オバマ大統領との初会談を終えて帰国した麻生首相は、大逆風にもかかわらず、もしかすると「狙いどおり」と、ネアカ、前向きの首相らしい現状認識を抱いているのかもしれない。ブレまくりの首相が唯一「ブレなし」なのが、実は昨年10月末の解散先送り決定以来の「解散は予算成立後」の方針である。裏返せば「予算が成立したら解散」の決意と見て取れたが、その方針に沿って一直線に走り、第2次補正成立、2009年度予算の年度内成立にメドをつける一方、外交実績をアピールしてきた。
 超低支持率は大誤算だが、いまも「解散は私が判断」と繰り返し言明し、続投・解散権実行の姿勢を貫いている。

 解散の最終判断は首相が一人で行う「孤独の決断」だが、麻生首相はそこで2つの過去の実例を思い浮かべるのではないか。
 一つは麻生首相が支持率低迷を指摘された際に自ら持ち出す1967年の「黒い霧解散」だ。当時の佐藤首相は不人気下で「死中に活」を求めて解散を行った。総選挙では予想外に健闘し、ほぼ現状維持に食い止めた。もう一つは尊敬する祖父・吉田首相の53年の「バカヤロー解散」だろう。暴言による解散で、与党自由党は過半数割れしたが、なんとか延命を果たし、以後1年4ヵ月も首相を続けた。

 大ピンチの麻生首相だが、同じように過去に大ピンチを脱した先輩がいたと意を強くしているかもしれない。低支持率だろうが、麻生降ろしが始まろうが、黙殺して「麻生解散」で突っ走りそうだ。
衆議院3分の2を最後に予算関連法案成立で使う。4月28日以降に可能になるから、成立直後に解散、5月下旬の選挙の腹ではないか。「バカヤロー・麻生」の解散なら党壊滅と叫ぶ自民党が「バカヤローの解散」を阻止できるのか、「死中に活」の麻生作戦が成功するのか。
 3月以降の最大の焦点だが、民意不在の政治空白の解消を望む国民は、いまや首相の応援団で、早期の「バカヤローの解散」を待ち望んでいる。
(写真:尾形文繁)
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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