30円の値上げが立ち食いそばの死活問題なワケ ゆで太郎・富士そば社長対談(上)
池田:一緒なのは日常食を提供しているところでしょう。高級そばではなく、日常食としてのそばを提供しているところ。前は町のそば屋さんは日常食だったんですけど、今は立ち食いそばがそれに変わっています。
ラーメンなど外食産業の多様化や後継者不足もあり、古くからの町のそば店は各地で閉店が相次いでいる。そんな従来の日常食としてのそばは、立ち食いそばという形で引き継がれた。現在も好調に出店を続けている「ゆで太郎」と「富士そば」だが、手軽な日常食だからこその悩みは多いようだ。
日常食で500円を超えるのは厳しい
池田:日常食というのは、やっぱりお値段が……。
丹:ぐっと価格帯を下げませんと。客単価で500円を超えるということは、われわれの商売では難しいですよね。
池田:1000円のお昼は食べませんよ。OLはわからないけれど(笑)。原価も人件費もギリギリのところまできている。そば粉は何年か前にすごく価格が上がって、小麦は少しずつ毎年上がっている。今は、肉も野菜もエビももがんがん上がっている。今後、こうしたものの価格が下がることはないでしょうし、値上げするしかないんだけど、みんな怖くて二の足を踏んでいます。
丹:ゆで太郎さんは数年前に値上げしましたよね。
池田:もりそばを290円から320円に上げましたが、1年は影響がありましたね。260円から290円に上げたときは、影響はあまりなかったんで、大丈夫だろうと思ったんですが、同じ30円の値上げでも300円台を超えると手が出にくくなるんですね。正直、泣きそうになりました。
丹:金額より、気持ちの問題がすごく大きい。
池田:10月には消費税が10%になりますが、こっちはそれほど影響がないように思いますね。
丹:消費税っていう理由がはっきりありますからね。
池田:とはいえ、お客様はやっぱり敏感なので、来なくなるということはなかったとしても、月10回だったのが、9回になるかもしれない。それだって来客数が1割減るわけですよ。ほかにも外食の選択肢はあるわけですからね。周りを見ていると、今のうちに値上げをして10月には上げないというお店もあるようですね。
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