30円の値上げが立ち食いそばの死活問題なワケ ゆで太郎・富士そば社長対談(上)
江戸時代から、安く早くおいしい日常食として庶民に親しまれてきたそばは、今も立ち食いそばとして多くの働く人たちに愛されている。しかし、ほかの飲食業と同じく、原材料費や人件費の高騰などに悩まされているのが現状だ。人口減や嗜好変化などによって外食産業が激変する中、日本最古のファストフード、立ち食いそばはどう生き残りを図っていくのか。
立ち食いそばの2大チェーンである「江戸切りそば ゆで太郎」を運営するゆで太郎システムの池田智昭社長と、「名代富士そば」を運営するダイタンホールディングスの丹有樹社長が、立ち食いそばの現在と未来について語り合った。
3大チェーンはそれぞれ考え方も戦略も違う
立ち食いそばと言っても駅そばや路面店などの立地、さらに店舗規模などでさまざまな業態があり、ライバルと目されることの多いゆで太郎と富士そばだが、やはりそのやり方は多くの点で異なっている。
池田智昭(以下、池田):まず富士そばさんは駅前の立ち食いスタイルで、うちは駅前からは離れたところという、立地の差がありますね。なので、お客様がバッティングする部分はないんですよ。
丹有樹(以下、丹):小諸そばさんと合わせて3大チェーンと言われることもありますけど、それぞれ考え方も違うと思います。
池田:店舗数はうちがトップですけど、都心部の店舗数では富士そばさんのほうが多いでしょうし。うちは都心部だと、50~60軒ぐらいで、郊外店舗が多いので。都心部への出店は年間数軒くらい。なかなか物件がなくて難しいんですよ。
丹:富士そばの店舗エリアは1都3県にしぼっていますが、今は134軒。富士そば店舗は駅前立地が条件なのですが、最近は都心だけでなく郊外にも出店してエリア自体は広がっています。都心の繁華街でなくても、数字が出るということが見えてきたので。そういうお店では、それまでの都心部とは客層がガラッと変わって主婦の方とかが来ていただけるんです。
池田:ほかに来ていただけるのは、リタイヤなさったご夫婦とかですね。あと、もともとゆで太郎はそば屋出身の創業者(水信春夫氏)が、立ち食い業態を始めたので、立ち食いそばではなく町のそば屋なんですよ。
丹:うちはもともと不動産屋ですからね。まずは店の立地を見るのが商売の基本なので、スタートから違う。かぶる部分は多いんですけど、違うところが面白いんだと思います。ゆで太郎派のお客様がいたり、富士そば派のお客様がいたり、それがいいと思うんですよね。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら