LINEで「出会い系投稿」を誘発した新機能の盲点 オープンチャットは批判への対策が甘すぎた

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例えば2007年に起きた闇サイト殺人事件は、「闇の職業安定所」という犯罪仲間を募集するインターネットサイトで知り合った3人が女性を路上で拉致、現金を奪ったうえで殺害するという衝撃的なものだった。

あえて視点を変えるならば、従来からあるネットコミュニティーの闇の側面であり、オープンチャットという機能特有ものではない。確かにLINEのユーザー数の多さ、普段使っているトークと並列に扱える手軽さなど、ほかの手段に比べて参加障壁、あるいはトークルーム設置のハードルは低い。ゆえにそれが危険度、とりわけ若年層に対して与える影響は懸念されるところだ。

一方でオープンチャットの利便性や機能としての魅力も表と裏で存在する。LINEが今後、どのような安全策を施していくかにかかっているが、運営側の管理を徹底することにより、オーソライズされていないコミュニティーよりもずっと安全性の高い機能にもできる可能性はある。

“現時点では”、安心・安全を提供できるのか疑問も

LINEは19日のサービス開始以来、矢継ぎ早にさまざまな対策を打ち出している。

わいせつな言葉や犯罪行為を連想させる言葉、交際相手を募集する投稿などが多いとされるが、近年は個人間送金機能がQRコード決済などで行いやすくなっていることから、脱法ドラッグなどの取引や特殊詐欺などの監視も必要だろう。LINEが設定するNGワードを含むメッセージが自動削除される機能が追加されたほか、またオープンチャットを開いた運営者自身が不適切なメッセージを防ぐためのNGワード設定機能なども追加している。

しかし現時点では対策が追いついていない。運営側では監視を続けているというがチェックが追いついておらず、利用者自身による通報機能に頼らざるをえない面もある。LINEアプリからオープンチャットの検索機能が使えない状態が続いているのも、十分な監視ができないからだろう。

一方で、LINEという単一のプラットフォーマーが提供するサービスだけに、犯罪を未然に防ぐAIなどを用いた自動監視の仕組みを取り入れ、成熟させれば安心・安全な場であることを“強み”として訴求することもできるだろう。

チャットルームには匿名参加が可能とはいえ、実際には監視のもとに運営されていることを明らかにするなど、監視体制や犯罪対策などをハッキリさせていくことも効果的だろう。

現時点では、LINEの想定が甘く安心・安全を提供できているとは言いがたいが、一方でLINEにとっては自らの取り組みの本気度を示せるチャンスではないだろうか。

今回の混乱を糧にして、オープンチャットの運用を落ち着かせることができれば、SNSの安全な運用、未成年の保護といった観点におけるLINEの評価は高まるはずだ。

LINEに掲載されているオープンチャットの説明文(写真:LINEアプリより)
本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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