LINEで「出会い系投稿」を誘発した新機能の盲点 オープンチャットは批判への対策が甘すぎた

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LINEユーザーならば、誰もがオープンチャットを開設でき、SNSなどで発信することで告知できる。手軽さとスピード感は、LINEのユーザー数が多いことも手伝って、これまでにない広がりも期待できる。

“興味が同じ仲間”が集まることで、コミュニケーションの密度が上がれば、LINEアプリの利用率も上がる。ひいてはLINE自身の利になる。これがオープンチャットの狙いではないだろうか。

一方で男女の出会いを演出する“出会い系”のチャットルームも多数が生まれており、これが冒頭で書いたようなLINEへの批判へとつながっている。

今までと同じこと、違うこと

問題を整理しよう。

批判が巻き起こるのは、これまでもLINEアプリが見ず知らずの者同士が匿名で連絡し合う道具として使われ、時に売春(援助交際)や脱法ドラッグの販売、恐喝などの犯罪行為に使われていることがたびたび指摘されてきた。

少女の性被害がLINEを介したやり取りと指摘されることも多く、警察からの要望に応じる形で注意喚起や18歳未満のユーザーをIDから検索できないようにするなどの対策が行われてきている。

つまり、LINEが犯罪などの行為に使われる可能性を運営者側は充分に把握、サービス設計時にも意識していたはずだ。それにもかかわらず、オープンチャットでの対策が甘いことに批判が集まっているということだ。

通常のLINEによるコミュニケーションでは、電話番号と1対1で対応するLINE IDに登録したプロフィール情報でしかメッセージなどを交換できない。しかし、オープンチャットは本来のプロフィールとは別に設定するプロフィールで参加できるだけでなく、参加するチャットごとに異なるプロフィールを設定可能だ。さらに、年齢制限もなく誰でも参加できる。

出会いを求める利用者が、同じ趣味で集まる未成年者などにアプローチしたり、そもそも売春目的で開設、隠語などを用いながらコミュニケーションする温床になるとの批判が出るのも当然だろう。

京都府警が、児童ポルノ事件や児童買春の温床になりやすい点や、利用者が違法有害情報に触れやすい現状を改善するようLINEに要請したのが2013年だったことを考えれば、LINEはオープンチャットのサービス開始に際しての覚悟、想定が甘かったとは言える。

ただし、“オープンチャットの機能”そのものを批判するのは的外れだろう。

前述したように、“同じ趣味・興味”など共通属性を起点にしてのコミュニティーは、これまでさまざまな形で形成されてきた。

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