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「機動戦士ガンダム」と「ジブリ」の意外な共通点 保守主義思想から読み解く

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杉田:高畑さんは『おもひでぽろぽろ』の制作前に、しかたしん(児童文学作家、劇作家)の『国境』3部作の第1部を原作として、日本による中国への侵略戦争・加害責任の問題を扱うという企画を進めていたんですね。

残された企画書によれば、それは失踪した友人の行方を尋ねて、京城(現ソウル)から旧満洲に旅立った1人の日本人少年の視点を通して、大日本帝国の植民地としての満洲国の風景や現実をアニメとして再現する、というものだったそうです。

けれども1989年の天安門事件の余波をうけて、企画そのものが流れてしまいます。高畑さんはその代わりに、塩漬け中になっていた『おもひでぽろぽろ』の制作を再開した。

高畑さんはなぜ、満洲や内モンゴルの歴史を描くプランから、日本の東北地方の有機農業を描く映画へとシフトしていったのか。この曲がり角には何があったのか。その後の高畑さんがそれまで以上に「日本的」に見える長編映画を作り続けていたことの意味も含めて、気になります。

アニメで描かれるトポス

中島:でも、『耳をすませば』はすごく好きでした。

杉田:近藤喜文さんという、若くして亡くなった方が監督した作品ですね。ただ、もとは宮崎駿の企画で、2人の関係が複雑に絡み合って作られていますけれども。

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『耳をすませば』は、いわば故郷なんてもうない、カントリー・ロードなんてないんだ、という作品です。少女たちがカントリー・ロードをコンクリート・ロードというふうに替え歌にして、それが自分たちにとっての生きる場所であり、そこがこれからの自分たちが生きるトポスになっていく、という作品なんですよ。

中島:なるほどね。そのせいなのかな、僕はああいう世界観のほうがすごくしっくり来る。

杉田:他方で『耳をすませば』は、非モテたちの世界では劇薬と言われています。中学生同士が恋愛して最後に結婚しよう、と宣言する話ですから。感情を逆なでされるみたいで。まあ自虐を含めた愛情をもって楽しんでいる、という感じでもあるんですけれど。

中島:僕はジブリ作品でいうと、『耳をすませば』と『魔女の宅急便』の2つが圧倒的に好きですね。

杉田:根拠地としての故郷もすでになくて、特別な才能や能力があるわけでもない日常的な女の子たちがその土地に――人間味のない都会だろうが、コンクリートの街だろうが――根付いていくというか。

軋轢などもありつつ、人間関係をうまくつくりながら。ジブリ作品の根幹のところにある過剰さ(宗教的な超越性とか、社会革命とか、エコロジーとか)を、なんとか穏やかなところに落とし込んでいくような。これがやっぱりジブリ作品の1つの魅力になっているんでしょうね。保守主義思想から読み解くジブリ作品、というのはもっと聞いてみたいですね。

(次回につづく)

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