内製化にこだわる日本企業には難しい大胆革新 すべてのイノベーションは水平思考の結果だ

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AI業界には、以前からこうしたオープンソース文化が根づいています。例えば、カップ麺工場のベルトコンベヤーに固定カメラを設置し、カップ麺にゴミが入っていないかを調べる不良品検出AIは、今は基本的にタダで作れます。もちろん、人件費とサーバー代程度は別としても、外資系メーカーの特殊なシェアウェアを使う必要はなく、フリーウェアで十分に高品質なものが作れます。従来のようにソフトウェアの原価がかからず、組み合わせが高い付加価値を生むというビジネスモデルになります。

日本ではこうしたソフトウェアも内製化することが多いのですが、基本的にオープンソースのクオリティーにも届かず、精度が低いのが現状です。オープンソースのように水平分割化が進んだ市場では、個々の強みとオリジナリティーに集中して、それ以外はレンタルして組み合わせる戦略が有効で、発想の転換が必要です。

「熊蜂はなせ飛べるのか」

演繹と帰納をベースとする垂直思考(バーティカル・シンキング)は、前提から結論までいわば一本道ですから、基本的に誰がやっても同じ結論になります。そのため安定感と説得力はあっても、何か突拍子もないアイデアが閃くような創造的思考には向いていません。

しかし、従来の定説にしたがい、演繹的に解を導き出す思考法では、企業も個人ももはや持続性を高められなくなりました。

だからこそ、水平思考(ラテラル・シンキング)が重要になるのです。

「熊蜂はなぜ飛べるのか」という有名な話があります。かいつまんで言うと、「意志の力で飛んでいる」という精神論的な説明がされていたのが、その理論自体を疑うことで、結果として「空気の粘性を利用して渦を巻き起こすことで飛んでいる」ことがわかりました。

これと同じように、私の知る限り、「すべてのイノベーションは水平思考の結果である」と言ってもいいほどです。水平思考によって得られた仮説をそのまま実行に移すと、「その手があったか!」「ずるい!」なとど言われます。また、水平思考が身につくと斬新なアイデアや企画を思いついたり、行き詰まったプロジェクトを蘇生させたりすることが可能になるだけでなく、自分の生活に適用すれば、人生におけるイノベーションにもつながります。

今や経済の主役は、かつての自動車や電機のような製造業や金融業から、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)のような巨大プラットフォーマーをはじめとしてさまざまなIT企業、さらにAI系へと移りつつあります。

そういう意味では、先端テクノロジーを学びながらマネジメントに活かす、いわば文理融合型のMOT(技術経営)という学問分野は、今後ますます重要になっていくでしょう。

大澤 昇平  東京大学特任准教授、Daisy CEO

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おおさわ しょうへい / Shohei Osawa

1987年福島県生まれ。18歳で未踏スーパークリエータに認定。東京大学・松尾豊研究室で人工知能とウェブに関する博士号を取得後、IBM東京基礎研究所を経て現在、東大特任准教授、株式会社Daisy代表取締役CEOを兼任。

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