内製化にこだわる日本企業には難しい大胆革新 すべてのイノベーションは水平思考の結果だ
某金融機関ではシステム構築に膨大な時間と予算をかけているのにいまだに完成していないらしく、業界で「サグラダファミリア」と揶揄されているケースもあります。ほかにも、コンサルタントに相談して見積もりをとったらケタが1つ2つ違っていたとか、納品されたが使えなかった、あるいは納品にさえ至らなかったというケースもあります。
つまり、発注側のお客さんは本物の寿司の味がわからないので、受注する側が提供するカリフォルニアロールを、これが寿司だと思って食べている、そんな状況です。
こうした中で、エンジニアもより高い報酬を得ようとするなら、文系スキルが必要です。ただ、文系のコンサルタントも入社してからスキルを身につけていくわけですから、その意識さえあれば逆に理系エンジニアが文系スキルを身につけて対応することも可能なはずです。現にアメリカでは、プロスポーツ選手並みの報酬を得ている高度エンジニアが大勢います。
水平思考で「意外な組み合わせ」を発見
時に大きな富を生みだす「イノベーション」という言葉には、何かを発明したり、天才的なアイデアが閃いたりするというニュアンスがありますが、要するに、その本質は「意外な組み合わせを発見する」ことにあります。
意外な組み合わせが発見につながることは、もともと学術分野では特許や論文を書く際の経験則として知られていて、私が以前いたIBM東京基礎研究所では、「巨人の肩に乗れ」という標語で伝えられてきました。新しいことに挑むときはまずは先人の知恵を利用すべし、という意味になります。
IT企業は、最初にいち早くプロダクトを世に出して、後発ライバルに差をつけることが重要です。その際、1社単独の垂直統合型ビジネスモデルより、自社の持つ強みに集中し、足りないリソースは適宜他社から調達する水平分割型モデルのほうが、生産面でもスピード面でも効果的であるのは言うまでもありません。
かつてコンピューターというハードウェアからソフトウェアまで、すべてを自社で制作していたIBMは、ソフトウェアしか提供しないウィンドウズ(マイクロソフト)と、ハードウェアしか作らないインテルとの「ウィンテル」陣営に粉砕されました。
さらにウィンドウズがソフトウェアの開発環境をオープンにしたことでフリーウェアが生まれ、誰でも先進的ソフトウェアを利用できるようになり、インターネットの拡大と相まって、オープンソースという集合知文化が醸成されてきました。
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