小泉発言「次の一手」

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小泉発言「次の一手」

塩田潮

 小泉元首相の痛烈麻生批判から1週間余が過ぎたが、隠れた狙いと底意が今も話題を呼んでいる。郵政迷走発言の麻生首相に鉄槌を下すための一撃だったのは間違いないが、首相時代に政局の読みと政権の運営力で凄腕を発揮した名うての勝負師である。痛烈批判は「次の一手」の布石ではないかと見る人は多い。であれば、「次の一手」とは何か。

 麻生政権を倒し、親小泉路線の新首相を擁して自民党内をもう一度、小泉色に塗り替える野望を抱いているとも思えない。だが、首相時代に推し進めた小泉路線の全否定だけは許さないという気持ちは強いはずだ。麻生首相ら自民党の非小泉化も気がかりだろう。それ以上に、民主党政権が誕生すれば、小泉路線の全面見直しが始まる可能性が高い。何か一発逆転の妙手はないかと小泉氏が策を巡らせたとしても不思議ではない。

 妙手とは、もしかすると民主党の潜在的な親小泉勢力との連携を視野に入れた一種の政界再編作戦かもしれない。振り返ると、首相時代に当時の前原民主党代表を相手に大連立構想を提唱し、仕掛けを始める構えを見せたこともあった。政権獲得を視野に入れる民主党は今は政界再編論を相手にする空気ではないが、総選挙後、どんな展開となるか、一寸先は闇である。とはいえ、不可解なのは、引退を公言して政治家生命が半年以内となった今、小泉氏に残りの短時日で何ができるのかという点だ。現役の間に再編の布石をと考えて動き出したとしても、本当の出番が訪れるのは引退後というのでは、話にならない。

「色気がなくなったら政治家を辞めるとき」というのは三木元首相の言葉だが、小泉氏は引退の瞬間まで「色気」を示し続けるために麻生批判で「色香」を振り撒いているだけなのか。それとも前例破りの小泉流で次々と政界の常識を塗り替えてきた小泉氏である。最後に人々をアッと言わせるような予想外の秘策を持ち合わせているのだろうか。
(写真:高橋孫一郎)
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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