想像を絶する「シロアリの女王」の虚しい最期 人間の生死だけが特別なわけじゃない

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──動物や魚や昆虫たちのほうが、生と死に真摯というか。

生物を研究してる人は絶対わかると思うんですけど、人間だけが特別ってことはなくて、例えば人間の夫婦愛といっても、オスとメスが引き合うのは魚も昆虫も同じ。子どもがかわいいという感情だって、子孫を残すために人間の脳がそうプログラムされてるだけで、動物には理解できないってことはないですよね。動物のほうがよほど子孫を残すことに必死。動物には少子化なんてないわけで。

生と死って、結局スクラップ・アンド・ビルドですよね。単細胞生物のように自分の分身を増やしていくだけでは新しいものを作り出せない。コピーミスによる劣化も起こる。そこで古いものを一度壊して新しく作り直したほうが、環境の変化に対応していける。進化の過程で生き物自身が作り出した偉大な発明なんです。

生きるとか死ぬとかは人間が思うほど大げさなことじゃなくて、生命の営みの中で単純に繰り返されているただの仕組みです。たったそれだけのことがすばらしいというか、尊厳があると思いたい。

死にざまとは生きざまでもある

──確かに、彼らの壮絶な死にざまから、生の尊さが伝わりました。

『生き物の死にざま』(草思社)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

結局、死にざまっていうのは、生きざまでもあると思うんですね。一生懸命って言い方は変かもしれないけど、それぞれの生き物がそれぞれに工夫しながら生きている。ちっぽけなアリや蚊やカエルでさえ、生存戦略を発達させてきた。この本で、命のすごみを感じてもらえるとうれしいです。

蚊1匹、アリ1匹が、次の瞬間たたき潰されるかもしれない、食べられるかもしれない、そんな中で、ちゃんと今を生きて輝いてるわけじゃないですか。一方で、現代を生きる人間って命の輝きを放っているとは思えないんです。アリとか蚊のほうが、よっぽど命の輝きを放っているように見える。私たちが生きる力をもう一度見つめ直すきっかけになればいいな、と思います。

中村 陽子 東洋経済 記者

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なかむら ようこ / Yoko Nakamura

『週刊東洋経済』編集部記者

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