日本は北方領土問題を絶望的にわかっていない 丸山バッシングに見る日本言論界の残念さ

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確かに前述したとおり、発言は当然批判されるべきだが、メディアや政界による総攻撃はさすがに度を越していると言わざるをえない。発言は間違っているとはいえ、それは若さや経験不足、国際情勢に関する理解不足によるものだと見ていいだろう。

これに対する批判のあるべき姿とは、例えば「戦争するしかないと軽々しくいうのではなく、真面目に北方領土を取り返す方法について考えるべきだ」というものではないだろうか。そしてその批判は冷静な形で本人に伝えるべきで、大々的なバッシングはまったく不必要ではないか。

現在の日露交渉が完全に間違っている

さらにおかしいのは、丸山バッシングの中身である。バッシングは主に3点に集中していたといってよいだろう。それは、「戦争という言葉を口にしたこと」「日露交渉に影響を及ぼしかねないこと」「ロシアが不快な思いをする」という3点である。

まず戦争という言葉を口にしたことは、これほどバッシングされるべきことだろうか。「戦争しか方法がない」という発言を批判するならわかるが、戦争という言葉を口にしたこと自体を批判すれば、それこそ真面目な議論ができなくなる。当然戦争は非常に悲劇的なものであり、何としてもそれを避けたいという思いは誰にでもあるであろう。

しかし、国際情勢や二国間関係、まして、領土問題といった難しい問題を考えるうえで、戦争という現象を無視することはできない。戦争とは絶対に避けなければならない極端な手段ではあるが、議論や考察の中で戦争という現象も含めて、さまざまな要素を考慮しなければならない。だから戦争という単語を使用しただけで人をバッシングすることは間違っている。

次に、丸山発言は日露交渉に影響を及ぼすかもしれないという点についてだが、そもそも日本人の多くは、今の形の北方領土に関する日露交渉が完全に、根本的に間違っていることをわかっていない。

日本側は最初から大幅な譲歩をする姿勢を取っているのに対して、ロシアは強硬路線を貫いている。この状態が続くと、交渉は必ず、日本の一方的な大幅な譲歩とロシアの一方的な勝利という結果でしか終わらない。つまり、現在の日本の姿勢は自国の国益を大きく損なうものなのである。

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