クールジャパン機構、この1年で何が変わった? 昨年就任した北川CEOと加藤COOを直撃した

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――今年4月に示された投資計画によると、今後10年間で毎年181億円ずつ、合計1800億円超の投資を計画しています。相当な投資件数と金額になると思いますが、今の機構の人材で十分なのでしょうか。また、投資対象は十分存在しますか。

北川:これから直面するのはそこだと思う。この11月で7期目となるが、このチームとなって投資件数は結構増えた。このペースでいくと、以前は想定していなかったことを想定し始めないといけない。

北川直樹(きたがわ なおき)/1953年生まれ。1977年中央大学商学部卒業後、CBSソニー入社。ソニー・ミュージックエンタテインメント代表取締役CEOなどを経て、2018年6月から現職(撮影:尾形文繁)

エグジットはこれから増えてくる。大きく人を増やすものでもなく、2人増えるだけでも助かる、という世界。加藤COOを中心に、チームを新たに編成し直すなど対応をしている。

加藤:ご指摘の通り、もしこのペースで投資を続けるなら、人員は増やさざるをえないかもしれない。一方、ファンドのサイズを上げることで投資効率を上げる方法もある。

ただ、政策性の観点からいうと、大きければいいというものでない。サイズ、政策性、収益性のバランスをうまくとりながら、効率よくチームを編成し、手厚くやるべきところは手厚く、案件サイズも工夫していく。

投資先も、簡単に見つかるということではないが、われわれのスタッフが正しい戦略に基づいて正しい努力をすれば、十分なパイプラインは積み上がる。投資対象に挙げている4分野の裾野は広く、投資対象はたくさんあるが、いい投資対象がたくさんあるかというと、そうでもない。

エグジットには2年以上、長い期間がかかる

――エグジット(投資案件の売却)に至った案件は今のところ3件で、共同投資先への売却や投資先による買い戻しが中心です。今後エグジットが本格化すると思われますが、IPOなど具体的なイメージがあるのでしょうか。

加藤:一般論でいうと、ファンドなので(IPOなどのエグジットを)当然積極的に検討する。検討を進めるにあたって、まず政策的な目的を一定程度達成できているか。それが第一義なので、満足する結果を生んでいるのなら、次のオーナーへ引き渡していく。

とはいえ、現実には投資して2年間やって、すぐエグジットするかというと、2年では満足いく政策目的を達成できないケースがほとんどだと思う。技術的にはそれよりも長い期間でエグジットしていくことになる。

――例えば、今年6月から7月にかけて、日本酒関連の投資が2件ありました。これらのビジネスがどういう状態になると、おっしゃるような「政策目的」が達成されたことになるのでしょうか。

加藤:案件ごとに政策KPI(重要業績評価指標)が決まっており、目標の70%を達成すると、一定程度達成できているということになる。そのハードルを越えてきたところでIPOなり、戦略的な買い手にバトンタッチしていくことになる。

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