N国党台頭で話題沸騰する「NHK受信料」の現実 なぜ今「NHKをぶっ壊す」が票を集めるのか

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民法には、両当事者双方の合意があって契約が成立するという、契約自由の原則があるが、当事者の意思なく契約を成立させる放送法64条1項の規定は、この原則の例外となる。そこで、こうした契約締結を強制するような条項がそもそも憲法に反していないのか。こうした問題を正面から議論したのが平成29(2017)年の最高裁判決だった。

この裁判において、最高裁は、放送法64条1項は適正・公平な受信料徴収のために必要な内容の受信契約の締結を強制する旨を定めたものとして、憲法の規定に違反するものではないと判示した。公共放送を維持するためには契約自由の原則の例外も許容したことになる。

他方で、放送法が具体的に契約を成立させる方法について定めていないことなどを理由に、受信契約の成立には原則として双方の意思表示が合致することが必要であると述べた。法律上の義務があったとしても、一方的なNHKからの申し込みだけで契約が締結されることはないというわけだ。

とはいえ、全員が素直に「はい、そうですか」と納得して契約締結に応じてくれるわけはない。そうした場合に備えて、裁判所は、契約締結を拒絶している者に対しては、民法上の規定に従い、裁判をもって利用者の意思表示とするという形で契約締結させることができると示している。

合憲であり有効だが誠実な協議による合意が必要

かなり複雑な構成ではあるが、以上をまとめると以下のようになる。

放送法64条1項の強制契約締結義務自体は合憲であり有効。しかし、その場合でもNHKは受信者と誠実に協議し合意によって契約を締結する必要がある。もしそれでも受信設備を設置しているのに、契約を締結しない者がいた場合は、裁判を起こして判決を勝ち取れば契約を成立させることができるというわけだ。

実際には、不払いの受信者全員に対して訴訟を提起して判決によっ契約締結に変えていくのはおよそ現実的ではない。法律上の契約強制締結義務といっても、こうしてみると、放送法64条によってもNHKは強大な権限を持っているとまではいえない。このことは、NHKが受信者の理解を得て業務を遂行していく事業体であることを考えると、最高裁の判断は穏当なものといえるだろう。

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