N国党台頭で話題沸騰する「NHK受信料」の現実 なぜ今「NHKをぶっ壊す」が票を集めるのか

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放送法が成立したのは昭和25(1950)年のことだ。当時と令和の今とを比較すると、社会の様相が大きく変わっており、人々の情報に対する接し方も大きく変化を遂げている。

新聞やテレビ、ラジオといったマスメディアがなくてはおよそ情報を得ることができなかった時代に比べ、現代では、インターネットやスマートフォンを活用することで、政治経済のニュースや災害情報などのさまざまな情報にアクセスすることも極めて容易になってきている。

こうした社会構造の変化を考慮してみると、将来的にはN国党の政策が今以上に人々の支持を集めることがないとは言い切れない。ましてや、今年度中にはNHKのインターネット同時配信を開始することが予定されており、今年5月にはそのために必要な放送法の改正も行われた。

現時点では、NHKの受信契約者がネットでも視聴することができるようにするとのことだが、インターネットですべてのNHK放送作品が視聴できるようになり、テレビという受信設備が不要となっていく場合においても、現行の受信料制度をそのまま維持するのかどうか、議論が高まっていくことが予想される。インターネットに接続されるパソコンやスマートフォンにかかる受信契約をどうするのかという論点は避けられないからだ。

同時配信が完全実施された場合における徴収実務の煩雑さを考えると、今後の受信料制度が向かう方向性は2つあると考えられる。

1つは、負担の公平性を重視して、ドイツのように受信設備の有無にかかわらず広く公共の負担を求める法制度に変える方向性。もう1つは、N国党が主張する形の、放送スクランブル化を行って受信契約者のみが視聴できる有料放送化の方向だ。

後者の方向に進んだ場合は、契約者数減少によりNHKの財政基盤は悪化し、結果として放送作品の質の低下は免れないだろう。今後ますます放送の国際化が進む中、世界の放送局と伍していくにはマイナス材料となりうる。

個人的には、充実したサービスが提供されるのであれば、公共放送の社会的意義に鑑みても、ドイツ方式の公益負担制度に切り替えることに賛同したい。

国民の理解を得るための改革は避けられない

ただし、その場合にはNHKとしても国民の理解を得るための改革は避けられないだろう。放送内容の充実化、公共性のさらなる強化はもちろんのこと、同時配信・見逃し配信のみならず過去放送作品のオンデマンド提供など、より一層のサービス拡充を図ることによって、真に「豊かで、かつ、良い放送番組」(放送法81条1項)を提供し、放送法の趣旨にかなった国民の支持を確かなものとすることが不可欠であると考える。

さらには、N国党の支持が広がっている背景として、「NHK職員が既得権益を享受する特権階級なのではないか」という心情的な部分も大きいと思われる。

NHK自身が経費や職員待遇の見直しなどを行って、国民に理解し愛されるNHKを目指さなければ、N国党の主張に世論が傾くことも十分ありうるだろう。また、NHKの受信料徴収員とのトラブルについては、年間1万件近く消費生活センターに相談があり、強引な徴収方法については批判も根強い。

最後に、イギリスのBBCは、王立憲章(ロイヤル・チャーター)という免許によって営業権が認められているが、一定期間で更新する制度をとっている。NHKも同様に10年など一定の期間を設けて、事業免許の更新タイミングで都度国民が納得するように制度を見直していく形も検討に値する。

田上 嘉一 弁護士、弁護士ドットコム取締役

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たがみ よしかず / Yoshikazu Tagami

こちらも早稲田大学法学部卒、ロンドン大学クィーン・メアリー校修士課程修了。陸上自衛隊三等陸佐(予備自衛官)。防衛法学会、戦略法研究会所属。大手渉外法律事務所にて企業のM&Aやファイナンスに従事し、ロンドン大学で Law in Computer and Communications の修士号取得。知的財産権や通信法、EU法などを学ぶ。日本最大級の法律相談ポータルサイト「弁護士ドットコム」や企業法務ポータルサイト「BUSINESS LAWYERS」の企画運営に携わる。TOKYO MX「モーニングCROSS」などメディア出演多数。

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