アスクル社長解任劇、「主謀者」は存在したのか 前社長の保身か、それとも支配株主の横暴?
アスクルがヤフーとの確執を明らかにした7月18日の記者会見後に岩田前社長は「宮内謙ソフトバンク社長の意思を感じた」と言い、総会が近づいてくると「孫さん(=ソフトバンクグループ〈SBG〉の孫正義・会長兼社長)が背後にいると感じた」とも語った。SBGはソフトバンクの親会社、ソフトバンクはヤフーの親会社、ヤフーはアスクルの親会社である。
1月にヤフーの川邊健太郎社長が岩田前社長を訪れた際、「軍隊と同じ。やらなかったら、やられる」とヤフー幹部が話したこと、1月の訪問で孫氏の名前が出たことが「宮内主謀説」や「孫主謀説」の論拠とされた。
ところが8月2日の総会後にSBGは次のようなコメントを発表した。
「孫個人は投資先との同志的な結合を何よりも重視するため、今回のような手段を講じる事について反対の意見を持っておりますが、このたびの件はヤフーの案件でありヤフー執行部が意思決定したものです。本件はヤフーの独立性を尊重して、ヤフー執行部の判断に任せております」
7日の決算説明会で孫社長は「私が後ろで糸を引いていたわけでもなく、忖度をさせたわけでもない」と自らの口で明確に否定した。
宮内社長は「岩田前社長とは会ったこともない」
つまり、アスクルの解任劇は孫社長の意思ではないというのである。消去法で主謀者は宮内社長ということになる。
しかし、8月5日に開かれたソフトバンクの第1四半期決算説明会で、宮内社長は「ヤフーには私も役員として入っているし、川邊社長とは毎日のように情報交流をやっている。(アスクルの社長や独立役員を事実上解任するかどうかは)ヤフーの執行部が決めることで、アスクルの業績回復のために苦しい判断だったと思う」と語った。そのうえで「岩田前社長とは会ったこともない。ヤフーとアスクルとの業務・資本提携の詳しい契約内容も知らない」と明言した。
この宮内発言が事実ならば、川邊社長は1月に岩田前社長を訪問した際に、宮内社長や孫社長の存在をちらつかせることで、ヤフーとアスクルが2012年から共同で進めている個人向けネット通販事業「LOHACO」(以下、ロハコ)事業の譲渡や岩田社長の退任を迫ったということになる。
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