SNSで疲弊している人は「名言」を読むといい 齋藤孝が選ぶ「心を支える日本人の名言」

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「声に出して読む」の次は暗唱すること。覚えてしまって、そらで言えることが大事です。

そのときは意味がよくわからなくても、身体に刻まれていると、あるとき「こういうことだったのか」と気づく。そしてことあるごとに判断を助けてくれる。偉大な先輩からつねにアドバイスをもらえるようなものなのです。

「己の欲せざる所、人に施す勿れ」(『論語』)を心に刻み込んでいると、折に触れて「これは自分がやられたら嫌だからやめておこう」と判断ができます。この言葉が自分を正してくれるのです。

ですから、本当に大切なのは言葉が身に付くまで練習することです。まずは暗唱して言葉を自分のものにし、その言葉で実践する。言葉で鍛錬して自己を鍛えるというイメージでしょうか。

名言を引用し、日常の中で積極的に使う

名言を身に付けるコツは、どんどん引用することです。心の中でただ唱えているだけではなく、文脈に合わせて名言を引いてきて、自分の言葉ともつなげてみる。そうやって日常の中で使います。

引用すると、もともとその言葉を言った人の精神と自分の精神がつながり、過去から現在、そして未来へと続く精神の系譜のようなものができて強くなった気がします。

極端に言えば、本を100冊読んで一言も引用できないより、1冊だけ読んで1つでも引用できるほうが価値はあるのです。

言葉との向き合い方がわかったら、ぜひどんどん「マイ名言」を増やしていってほしいと思います。自分なりにいいと思った言葉、今の自分を助けてくれる言葉が「マイ名言」です。「座右の銘」と言うとちょっと構えすぎてしまうし、「私のもの」というところが重要なので、そう呼んでいます。

これはという言葉に出合ったら、グルグルと囲ったりマーカーを引いたりして際立たせます。近頃は線を引きながら本を読む人が減っているように感じますが、それも「自分の血肉にしたい」というような意識が薄れているからかもしれません。

『100年後まで残したい 日本人のすごい名言』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

手帳やノートにメモするのもいいでしょう。いずれにせよ、「あ!」という瞬間にすかさず言葉をとらえることが重要です。あとから「いいこと書いてあったな」と思い出そうとしても、だいたいは忘れてしまいます。

名言への意識が高まると、マンガを読んでいても、映画やドラマを見ていても、「これは」という言葉に出合うと思います。それもメモ。しっかりつかまえてマイ名言にしてしまいましょう。

このようにして名言力を高めていくと、自分の心を支えるのはもちろん、悩んでいる人の心を支える手助けもできるようになるでしょう。言葉のプレゼントをして、喜んでもらうのです。

それは先人たちの名言の引用かもしれないし、オリジナルの言葉かもしれません。そう考えるとさらにワクワクしてこないでしょうか。

齋藤 孝 明治大学教授

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さいとう たかし / Takashi Saito

1960年静岡県生まれ。東京大学法学部卒業後、同大大学院教育学研究科博士課程等を経て、明治大学文学部教授。専門は教育学、身体論、コミュニケーション論。ベストセラー著者、文化人として多くのメディアに登場。著書に『声に出して読みたい日本語』(草思社)、『読書力』(岩波書店)、『雑談力が上がる話し方』(ダイヤモンド社)、『質問力』(筑摩書房)、『語彙力こそが教養である』(KADOKAWA)、『読書する人だけがたどり着ける場所』(SBクリエイティブ)ほか多数。著書発行部数は1000万部を超える。

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