「スピルバーグやゲイツ」も通った成功への裏道 自分の小さな殻を打ち破る「サードドア」

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また、スティーブ・ジョブズとアップルを創業したスティーブ・ウォズニアックにインタビューした後でアレックスは、「ジョブズのほうがウォズニアックより成功した」という世の一般的な評価を疑いはじめる。

アレックスの体当たりのインタビューから見えてくるのは、表層的ではない、セレブたちの人間性である。

上ばかり見ないで、世界を広げよう

「ミッション」を続けていくうちに、アレックスは、インタビュー相手として選んでいるのが男性ばかりであることに気づき、世界が見えていないと自分を恥じる。さらに、世界一のお金持ち、最も有名な映画監督など、上の世界の人ばかりを追いかけていたことにも気づく。

それから徐々に、自分自身の変化や、家族との関係性を有名人とのインタビューの中で吐露するようになっていく。そうした会話によって、それまではインタビュー候補として、ただの名前としてしか見ていなかった有名人たちが、自分と同じ一人の人間であることを知っていく。

伝説の音楽プロデューサーであるクインシー・ジョーンズは、自分が経験してきたマフィアと音楽ビジネスの関係を語った後で、アレックスに失敗から学ぶことの大切さを伝え、こう言葉をかける。

「君は、すばらしくて、美しい、人間なんだよ。別のものになっちゃダメだ」

現代を生き抜くうえで、本書にちりばめられた知恵ある言葉に勇気づけられる読者も多いに違いない。評者も、本書に出てくる人間たちが、真摯に生き、発する言葉にぐっとくることが何度もあった。

成功者が成功の秘訣を箇条書きにまとめたような本は星の数ほどあるが、まだ何者でもない若者が、誰もが知るセレブに会った感想と、自らの体当たりの失敗を赤裸々に記した本は希少だと思う。

ネットやSNSを見れば「こうすれば成功する!」や「今までのスキルはもう通用しない!」といった言説があふれ、「成功への裏道」をどう見つけ出せばいいか、迷う人も多いに違いない。

この本は、そんな人たちに訴えかける、率直なメッセージがある。自己啓発本が大好きという方も、嫌いな方も、意識の高い若者も低い若者も、評者のようにもはや「意識をなくしてしまった」中年の方にも、ぜひ手に取っていただきたい。

それがあなたという人間をより深く知り、あなたの「サードドア」をこじ開けることにつながるかもしれない。「自分の殻を破るヒント」が詰まった冒険の書である。

塩野 誠 経営共創基盤(IGPI)共同経営者/マネージングディレクター JBIC IG Partners 代表取締役 CIO

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しおの まこと / Makoto Shiono

国内外の企業への戦略コンサルティング、M&Aアドバイザリー業務に従事。各国でのデジタルテクノロジーと政府の動向について調査し、欧州、ロシアで企業投資を行う。著書に『デジタルテクノロジーと国際政治の力学』(NewsPicksパブリッシング)、『世界で活躍する人は、どんな戦略思考をしているのか?』(KADOKAWA)等、多数。

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