対中関税第4弾、トランプは何を焦ったのか 「中国建国70周年」を前に習主席を揺さぶり
しかし、そう簡単にはいくのかは疑問だ。中国では、制裁関税第4弾の発動があれば、中国の経済成長率を1%前後押し下げるという見方がコンセンサスとなっている。今年4~6月期の実質GDP成長率は前年同期比6.2%増で、リーマンショック直後の2009年1~3月期の6.4%を下回り、1992年に統計が始まって以来もっとも低い水準だった。
ここから1%も下押しすれば、中国政府が目標としてきた2020年のGDPを2010年比で2倍にすることを目指す「小康社会」の実現は難しくなる。しかし、中国の経済政策に詳しい日本政府関係者は「それを覚悟してでもアメリカとは強気で交渉するという方針が中国政府内部では固まっている」という。
財政政策と金融政策で国内景気を下支え
7月30日には下半期の経済政策を策定するための、毎年恒例となっている共産党中央政治局会議が開かれた。そこでは現在の経済状況を「合理的な範囲」としたうえで、これまで通りに「積極的な財政政策と緩和的な金融政策」で景気を下支えする方針が確認された。
7月31日には李克強首相による国務院常務会議で雇用対策が打ち出された。雇用の減少は社会の不安定化につながるためだ。中国国内の今年の大学卒業生は日本の10倍以上の830万人と見込まれており、アメリカとの摩擦の影響が深刻化しても、彼らを路頭に迷わせないための雇用創出が喫緊の課題だ。
常務会議では、失業保険基金から拠出した1000億元(約1.5兆円)を使って就職支援策を拡充することなどがうたわれた。実際に制裁関税第4弾が発動されるときは、インフラ投資など即効性が高い施策の追加もあるのだろう。
アメリカ政府は5月5日に制裁関税第3弾を発動し、すでに10%の制裁関税を課していた2000億ドル分の中国製品について、5月10日から税率を25%に引き上げると発表した。
その直後にワシントンでの閣僚級交渉に臨んだ中国の劉鶴副首相は、中国メディアの取材に「原則問題では絶対に譲歩しない」という姿勢を打ち出した。このとき劉氏はアメリカと妥協するための条件を3つ挙げている。「制裁関税の完全撤廃」と「中国がアメリカから購入するアメリカ製品の規模で合意すること」、そして、「合意文書をバランスある、中国の尊厳に配慮した内容にすること」だ。
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