孤独死した40代男性の部屋に見た周囲との断絶 ふとしたきっかけで誰にでも起こりうる

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内閣府の『生活状況に関する調査 (平成30年度)』では、中高年のひきこもり状態にある人が約61万3000人いることが明らかにされた。

近年注目されている大人のひきこもりと孤独死は、私のこれまでの取材からも相関関係があると強く感じる。

孤独死とひきこもり

内閣府の調査によると、ひきこもり全体のうち「かつては正社員として働いていたことがある」が約74%という結果になっている。そして、性別を見ると76.6%が男性だ。同じく、今年の5月に発表された少額短期保険協会の第4回孤独死現状レポートでも、孤独死した人の8割が男性となっている。内閣府は、広義のひきこもりとして、自室や家からほとんど出ない状態だけでなく、趣味の用事や近所のコンビニなど以外に外出しない状態が6カ月以上続く場合と定義している。これは、孤独死した人の生活実態とも重なる部分が多い。先の塩田さんは語る。

「ひきこもりの結果、孤独死するというケースが後を絶ちません。例えば近くのコンビニで買ったカップラーメンの食べ終わった空の容器が垂直に何個も積み重なっている現場はよく遭遇します。カップラーメンがタワーのようになっているんです。引きこもった末の孤独死の特徴としては、インスタントラーメンとかレトルトとかミネラルウォーターを通販でまとめ買いしているケースが目立ちますね。現場を見ていると、極端なまでの孤独が寿命を縮めて、非常に危険な状況へとの追いやり、孤独死になってしまうと感じます」

先の内閣府の調査によると、ひきこもるきっかけは、「退職」が最も多く、「人間関係がうまくいかなかった」という理由が2番目に続く。つまり、かつては正社員やアルバイトなどで勤めていたが、何らかの理由で退職やドロップアウトを余儀なくされ、そこからひきこもるのだろう。

同じく孤独死した人の経歴を遺族に聞き取るなどしてたどってみると、こちらも昔は会社に勤めていた人ばかりである。

うじとハエが大量発生する孤独死の現場からは、生きづらい社会で孤立する現役世代の悲痛な叫びが浮かび上がってくる。おとなのひきこもりにしろ孤独死にしろ、私自身も含めて、ふとしたきっかけで、いつでも誰でも起こりうる。

『超孤独死社会 特殊清掃の現場をたどる』(毎日新聞出版)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

例え就労していても、ひとたび家に帰るとゴミ屋敷と化しており、セルフネグレクトが進行している例もある。どんなに夏の暑さが過酷でも、エアコンを使うこともなく、扇風機やコンビニの冷凍ペットボトルで1日1日をしのごうとする女性もいる。彼女は職場で嫌がらせを受けて心が壊れた。私はひきこもりや孤独死の取材で夏を必死に生き延びようとした人たちを数多く見てきた。

精神的に追い詰められているため、考える余裕がなく、何とか日々を生き延びることに精いっぱいでそれしか手段がないのだ。

塩田さんたち特殊清掃業者は、自分たちが活躍しないですむ社会が望ましいと感じている。私もそう思う。今この瞬間も、灼熱の夏を何とかかろうじて生きている人たちがいるはずだ。つらいと感じたら、誰でもいいので周囲の人に助けを求めることをしてほしい。そして、まずは、なんとかこの夏を乗り切って、命をつないでほしいと心から願っている。

菅野 久美子 ノンフィクション作家

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かんの・くみこ / Kumiko Kanno

1982年、宮崎県生まれ。大阪芸術大学芸術学部映像学科卒。出版社で編集者を経て、2005年よりフリーライターに。単著に『大島てるが案内人 事故物件めぐりをしてきました』(彩図社)、『孤独死大国』(双葉社)、『超孤独死社会 特殊清掃の現場をたどる』(毎日新聞出版)『家族遺棄社会 孤立、無縁、放置の果てに。』(KADOKAWA)『母を捨てる』(プレジデント社)など。

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