日本人とフランス人「休み方」はこんなにも違う なぜフランス経済は休みだらけでも回るのか

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くみ:長いバカンスを取る習慣が根付いているからこそ、バカンスの過ごし方にみんなが敏感になって、内容が充実していき、やがては世界中のバカンス客をも引きつけるようになった、ってわけね。

フランス人のアイデンティティー形成につながる?

エマニュエル:でもそれだけではないんだ。僕が思うに、夏の長期休暇による影響は、経済的だけでなく社会的な仕組みにも及んでいる。

グローバル化が進む中、発展国の中で重要な問題の1つが、国民の一体感や、同じ国家の国民であるというアイデンティティーの確立だと思う。現在フランスでは徴兵制もないし、移民が多くさまざまな宗教観を持つ人々がおり、また海外に留学する学生や海外旅行の増加などで、なかなかそういった意識は育ちにくい。

日本では、地形的にも島国であり他国と物理的に離れているし、学校で幼いころからこういった国民の意識を教育しているからあまり問題はないだろうね。フランスはこのような教育は学校でされることはないので、自分たちで住んでいる地域や宗教にかかわらず自分たちはフランス人なんだという意識を持つように努力しなくてはならない。

僕の場合はだけど、バカンスがその役割を果たしていたんだ。バカンスの3週間という長い期間、自分の住んでいるところとは別の場所に住むことで、まったく知らなかったようなフランスの景色や異なるタイプのフランス人たちと交流することで、自国の魅力の幅の広さが理解できるようになる。

幼いころからバカンスのたびに出会ういろんな人達や地域がすべてフランスという国なんだという意識を持つようになった。面白いことに、フランス人は3週間という長いバカンスでも海外旅行に行くよりかはフランス国内で過ごす方が圧倒的に多いんだよね。

くみ:そう、私もそこは気づいてた。国内外含めてフランス人は、バカンス中はほぼ必ずどこかへ行くから、旅行慣れしてる。それも毎年数回バカンスで出かけるから、あちこち行ったり、友人と情報交換して、評判のいいところを新たに開拓するのも頻繁に気軽にできるよね。見聞も視野も広がるし、逆にいえば自分のいつもいる場所を客観的に見ることもできるしね。

佐々木 くみ 執筆家、イラストレーター

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ささき くみ / Kumi Sasaki

東京生まれの30代。フランス在住10年を超す。2017年10月に、エマニュエル・アルノーと共著で自らの体験をつづった『Tchikan(痴漢)』をフランスで出版。イラストも手掛けた。

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エマニュエル・アルノー 小説家

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Emmanuel Arnaud

1979年生まれ、パリ出身。2006年より児童文学、小説、エッセーをフランスにて出版。2017年にThierry Marchaisseより佐々木くみとの共著『Tchikan』を出版。2000年代に数年にわたり日本での滞在、および勤務経験を持つ。個人のサイトはこちら

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