「処刑大国サウジ」に世界がダンマリな根本理由 ジャーナリストがどんどん収監されている

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サウジアラビアで自由を奪われ、命の危険にさらされているのは、何もジャーナリストだけではなく、2014年以降、700人が処刑されている。とくに、サルマンが国王に就き、その後ムハンマド皇太子が王位継承者になってからはそれが急激に増えているという。

アムネスティなどの調査では、今年に入ってからもすでに43人が処刑されている(大半は斬首)。43人中23人は麻薬所持者だった。昨年も処刑された人の40%が麻薬に関連しており、そのうち77%が外国人だった。東南アジアから出稼ぎに来ている労働者が麻薬の「運び屋」として利用された揚げ句、検挙される例が後を絶たないようだ。

報道によれば、このペースで進むと今年末までに過去最大の172人が処刑されることになると予測されている。ちなみに、処刑者の数でサウジを上回っているのは、中国(2018年は249人)とイラン(同285人)のみである。昨年4月にサルマン皇太子は、アメリカのタイム誌に対し、死刑の判決を減らし、刑法も一部改正すると語ったが、これがまったく守られていない状態だ。

ムハンマド皇太子クーデーター未遂も?

これを受けて、スペイン政府はロブレス国防相の決定をあくまで個人的な判断であり、スペイン政府の最終的な決定ではないとして誘導爆弾の輸出を承認。同様に、仮にアメリカがサウジに武器の販売を中断すれば、サウジはロシアから購入することになるだろう。そのために、サルマン国王は国王として昨年初めてロシアを訪問している。

とはいえ、実質的にムハンマド皇太子が執政を握っているサウジが今後も政治的に安定が保てるのかという疑問も湧いている。例えば昨年4月に首都リヤドの王宮付近に飛んできたドローンを、王宮の警備兵が撃墜したというニュースが報道されたことがあるが、これはクーデター未遂だったという見方が強くなってきている。その理由はムハンマド皇太子が、この日を境に国民の前に姿を見せなくなったからだ。

つねにメディアに対して積極的に自己をアピールしている同皇太子が約2カ月間姿を見せない状態が続き、中には、サルマン国王はドローンによって2発の銃弾を受け死亡、あるいは重傷だと報じるメディアもあった。さらにそれを裏付ける情報として、この事件後、アメリカのポンペオ国務長官が急きょリヤドを訪問してムハンマド皇太子と会談を持ったとされているが、両者がその時に一緒に写っているはずの写真も公開されなかった。

長引くイエメン紛争や財政難などから王族であるサウド家でも、サルマン国王への不満が高まっている。また、サウジでは古くから王家間での権力争いが激しく、権力を継承する立場にあるからといってもうかうかしていられない。無慈悲な処刑を繰り返し、国際世論を敵に回し続ければ、これを理由にサウジ国内で足をすくわれる可能性もあるのだ。

白石 和幸 貿易コンサルタント

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しらいし かずゆき / Kazuyuki Shiraishi

1951年生まれ、広島市出身。スペイン・バレンシア在住40年。商社設立を経て貿易コンサルタントに転身。国際政治外交研究も手掛ける。著書に『1万km離れて観た日本』(文芸社)。

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