「処刑大国サウジ」に世界がダンマリな根本理由 ジャーナリストがどんどん収監されている
この面会がこれまで内密にされていたのは、イスラム教徒が1カ月間、食を断つ「ラマダン」やG20大阪サミットを機会に、サウジが収監しているジャーナリストを恩赦として釈放するのではないかと期待していたからだという。訪問したのをすぐに公にすると、逆にサウジがそれに反発する事態を懸念してようだ。
ところが、サウジは7月の国際会議が開催される日まで1人の釈放もしなかったということで、RSFは大使館などで報道の自由や、ジャーナリストの釈放を要求して抗議するだけでは不十分だと判断。国際的にサウジにプレシャーを政治レベルからもかける必要があると判断して、4月の訪問を明らかにしたという。
国防相の発言を「撤回」したスペイン政府
サウジで人権が尊重されず言論の自由もないということについて、スペインのジャーナリストで、とくに人権問題について研究しているマルセリーノ・ガルシア氏はメディアに対して、問題は「言論の自由というのがサウジでは犯罪とみなされているということだ」と指摘。そのために、「人権尊重や言論の自由を主張する人たちを政府は収監させて脅迫したり、拷問をかけたりして沈黙させるという手段を用いている」と言及している。
サウジで言論の自由を抑圧すべく、政府が適用するのが「テロリスト取締法」である。すなわち、言論の自由を主張する人物はテロリストだと政府はみなすわけだ。例えば、政府の取った手段に抗議をしたり、同様の意味で集会を開いたりすれば政府は、それは言論の自由の一貫とみなして逮捕する。刑罰はむち打ちから始まって死刑までさまざまだ。
こうした圧政から国民を守る手段はほぼない。唯一可能なのは、国際的にサウジ政府にプレッシャーをかけることである。今回問題を提起した国境なき記者団や、アムネスティ・インターナショナル、ヒューマン・ライツ・ウォッチといった人権NGO組織から圧力をかけることしかないのである。
一方、国際連合は、この件についてあまり強く出ていない印象がある。というのも、国連人権理事会(UNCHR)に、皮肉にもサウジが2014年から理事国の1つになっているからである。
各国政府から圧力をかけることはなお難しい。例えば、昨年9月にスペインのマルガリータ・ロブレス国防相が、レーザー誘導爆弾400個のサウジへの輸出を中止した。そしてすでに受領しているその総額920万ユーロ(11億円)をサウジに返金するとした。輸出を中止した理由は、この誘導爆弾もイエメンの紛争に使われて罪のない市民が犠牲になる可能性があるということからだった。
ところが、サウジ政府はロブレス国防相の決定を不服だとして、スペインのナバンティア公営造船所に発注している2200型コルベット艦5隻、18億ユーロ(2160億円)の建造をキャンセルするとほのめかしてきた。
ナバンティア造船所はこの3年間、赤字経営を余儀なくさせられており、コルベット艦5隻の建造は1100人の直接雇用と、1800人の間接雇用、そして関連企業でも3000人の雇用がこの先5年間保障されるという意味で、サウジからの受注は「命綱」ともいえる存在だ。
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