花王「アタック」が32年間も首位を譲らない理由 衣料用洗剤王者、新商品「ZERO」の着眼点

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筆者は、かつて花王でコーポレート情報の発信に携わった。今でもメディアから、同社の企業体質への質問を受ける。その際「まじめだけど、少し理屈っぽい。学校の教室に例えると“理系の学級委員”です」と答えてきた。

これまでの洗剤広告も、理系らしく「機能の説明」が目立った。近年多かったセリフは「アタックが新しくなりました!」――。だが今回は、その決めゼリフを封印した。

「若い世代からは、『アタックは古いブランド』と思われていました。売り上げが首位の割に、存在感が希薄なブランドになっていたのです。このイメージを変えるには、大胆さを打ち出し、表現手法のリニューアルも大切。今までの洗剤CMで使われた言葉を洗い出し、使わないようにしました」(野村氏)

CMの中身を調べると、セリフに「界面活性剤」や、片手で軽量できる「ワンハンドプッシュ」を繰り返すなど、かなり“説明調”だ。映像は目新しいが、花王らしさは健在。そこが社風だろう。ただし、肝心の商品が高品質でないと話題性に終わる。その点はどうか。

「アタックZERO」のCM例(画像提供:花王)

「ヤシの搾りかす」を再活用

「新たに開発した『バイオIOS』は、非常に高い水溶性を有しながらも油になじみやすい性質をあわせ持つ画期的な洗浄基剤です。衣類の汚れ部分に集中作用して高い洗浄力を発揮しつつ、繊維に何も残しません。

原料は、アブラヤシの実から食用のパーム油を採取した際に残る、搾りかすです。これまで用途が限られていた油脂原料を有効活用できるようになり、サスティナブル(持続可能な)基剤を生み出すことができました」(野村氏)

花王が説明する表現を借りれば「バイオIOSの分子構造モデルは、長い親油基(=油になじむ部分)の中間部に親水基(=水になじむ部分)が位置する特殊な構造」なのだという。だから「油によくなじみ、汚れを落としながら、水によく溶ける」と説明する。

次ページ「搾りかす」の有効活用は、長年の課題だった
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