花王「アタック」が32年間も首位を譲らない理由 衣料用洗剤王者、新商品「ZERO」の着眼点
この「搾りかす」の有効活用は、花王の研究所における長年の課題だった。先人が積み重ねた知見に加え、和歌山県にある同社の研究所に所属する坂井隆也氏、藤岡徳氏、堀寛氏の3人をはじめとする関係者の連携で、ようやく使途を見いだすことに成功したという。
実は、アタックの歴史は「研究員の着眼の歴史」でもある。1987年の初代アタック発売の8年前(1979年夏)から、当時の研究員が「服の繊維に潜む汚れを落とす」基剤を探究し、試行錯誤の末、汚れを分解する「アルカリセルラーゼ」(「バイオテックス」)に結実した。
研究開発の現場も何度か取材したが、いつの時代も「The Detergent」(ザ・デタージェント=究極の洗剤)を掲げていた。つねに「究極」を目指して改良し続けたからこそ、アタックは30年以上、トップブランドでいられたのだろう。
「洗濯機」も「衣類」も「消費者」も変わった
1987年(アタック発売時)と2019年現在では、衣料用洗剤を取り巻く環境は大きく変わった。とくに次の3つだ。
(2)「衣類」の変化
(3)「消費者意識」の変化
(1)は、戦後の高度成長期に洗濯機が家庭に普及するにつれ、洗剤とは切っても切れない関係になり、洗濯機の進化に合わせて、各メーカーが洗剤の機能を進化させてきた。
1987年当時の洗濯機は、洗濯槽と脱水槽が別々にある「二槽式洗濯機」と呼ばれるものが主流だった。それが時代とともに「全自動(一槽式)洗濯機」や「乾燥機付き洗濯機」が開発され、さらには「ドラム式洗濯機」などに進化した。
現在、洗濯機の約2割を占める「ドラム式」は、少ない水で衣類をたたくように洗う。従来型の洗濯機とは洗い方が異なり、今回のアタックZEROでは「ドラム式専用」商品もそろえた。
(2)は、近年に大きく変わったものだ。新素材の化学繊維(化繊)が増え、従来の洗剤では繊維に潜む汚れが落としにくい。以前の取材では、2000年頃までは洗濯機で洗う衣服の約9割が木綿と聞いた。ビジネス現場のカジュアル化も進み、着る服も変わった。
(3)の変化はさまざまだ。例えば専業主婦が減り、女性が外で働く時代になった。そうなると、忙しい時間をやりくりして洗濯機を回す。「家事の分担」意識も高まり、洗濯が必ずしも女性の役割ではなくなった。一人暮らし世帯も増え、単身者にとって洗濯は必要な作業だ。このため、洗濯はより簡単に、誰がやっても失敗しないことが求められている。
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