日本の「たばこ規制」なぜこうも歪んでいるのか

屋内分煙、屋外禁煙という異常な状況

──難しいのは市民とたばこ産業の間で話が完結しない点ですね。

専売公社時代からたばこは担税商品で、民営化の際に作られたたばこ事業法でも、目的は「たばこ産業の健全な発展を図り、もつて財政収入の安定的確保〜に資する」です。

たばこの税収は年約2兆円で、国と市町村で折半。全税収の数%ですが、使い道自由な行政に都合のいい資金で、仮になくすとなると、別のもので補填するか歳出を削るか。厚生労働省が健康の観点からたばこに手をつけようとすると、所管の財務省から横やりが入るということの連続です。

たばこは政治そのもの

──日本のたばこの単価が極めて低いのもその一環ですね。

イギリス、オーストラリアなどは高単価にしてある程度の税収を維持しつつ、消費量を減らして健康を増進するという考え。日本は消費量を大きく減らさずに価格を小刻みに上げて税収を確保する。法に順(したが)っている財務省を批判しても意味はない。問題は、健康を犠牲に提供される税に頼る構造を是とするかです。

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──たばこに厳しい五輪の東京開催は規制強化のチャンスでした。

北京、ブラジル、ロシアが五輪を契機に屋内禁煙となったことに比べ、職場や飲食店において専用場所での喫煙を認めた改正健康増進法は手ぬるいとする批判もありますが、罰則付きの法律となったのは評価すべきです。国の法律は最小限の決まりで、原則として屋内は禁煙と書かれているのだから、自治体がそれに上乗せすればいい。次の機会により例外規定が少ないものにする土台はできた。

──東京都は上乗せしました。

舛添前都知事が五輪招致の際に受動喫煙防止条例を作るみたいなことを言ったら、自民党の都議連が猛反発して程なく撤回。それが、小池都知事の都民ファーストの会が都議選に勝ち、公明党と組んだら、ひっくり返った。都議選にはたばこ訴訟に関わっていた岡本光樹弁護士が、政治を変えなきゃと立候補して当選、従業員を雇う飲食店は禁煙、などの条例案の作成に尽力しました。たばこは政治そのもの。その政治のダイナミズムを目の当たりにした。

──曙光(しょこう)の一方、懸念もあります。

規制派は「たばこ=格好いい」を長年かけて「たばこ=害」に変えましたが、たばこ業界は電子たばこ、加熱式たばこで再逆転を狙っています。扱う店、器具はおしゃれですが、これらにもリスクはあります。まずは8月7日のシンポジウム「令和の新たばこ対策」で議論します。

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