道化師「英ボリス新首相」が何気に人気の理由 トランプとは根本的に異なる部分がある?

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2018年7月、ジョンソン氏は外相を辞任。当時のメイ首相が主導した離脱協定案への抗議だった。この協定案では、「イギリスはいつまでもEUから出られない」と主張した。その後は、デイリー・テレグラフのコラムを使って、「合意なき離脱も交渉条件に入れるべき」と訴えてきた。ちなみに、メイ前首相はじめ、多くの下院議員らや識者らは、崖っぷちから飛び降りるような「合意なき離脱」に反対している。

2016年の国民投票後、残留運動を率いたキャメロン首相が辞任を表明したとき、ジョンソン氏は保守党の党首選に立候補するつもりで、会見場所まで確保していた。しかし、会見の当日、盟友のマイケル・ゴーブ司法相が「支援するよ」と事前に約束していたにもかかわらず、自分自身が立候補宣言。

ジョンソン氏は、泣く泣く自分の立候補を取りやめざるをえなかった。しかし、ブレグジットの行き詰まりでメイ首相が辞任を表明すると、再度チャンスが訪れる。7月23日、全国の保守党員による投票で66.4%の票を集め、ジョンソン氏は党首選に勝った。首相になることが確実になった。

「自己満足のため」という批判も

党首選の結果が発表されたロンドンの会場で、壇上に登ったジョンソン氏は自分の役割をこう説明した。「ブレグジットを実現(deliver)」し、保守党を統一(unite)し、(野党労働党の)ジェレミー・コービン党首を敗退(defeat)させる)。そして、イギリスを「活性化(energize)させる!」。頭文字を取れば「dude(「やつ」、「男」)」だ。「Dudeたちよ、これからのイギリスを活性化していくぞ!」場内に笑いと拍手が沸き起こった。

ビートルズの曲「ヘイ・ジュード」をもじって、「ヘイ・デュード」と言う見出しとジョンソン氏の画像を重ねた、サン紙の1面(23日付け、撮影筆者)

ジョンソン氏を知る多くの人が指摘するのは、「イギリスのために奉仕する」という精神に欠けているのではないか、という点だ。彼が首相になりたい、というのも「自己満足のためではないか」と。

数々の失言や「事実を誇張する癖」に我慢ならないという人も多い。近年、最も著名な例が、国民投票のキャンペーン時にジョンソン氏が「イギリスはEUに毎週3億5000万ポンド(約470億円)を支払っている」と主張したことだ。離脱派のキャンペーンバスの車体にもこの金額を掲げた。

しかし、キャンペーン終了後、この数字が正確ではなかったこと、大幅に誇張していたことが広く知られるようになった。ジャーナリスト時代の誇張報道も考慮すると、これまでに相当量の情報を自分の都合のいいように書き、発信してきたとも言える。

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