道化師「英ボリス新首相」が何気に人気の理由 トランプとは根本的に異なる部分がある?

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次第にジョンソン氏は、お笑いの世界から政界に目を転じるようになった。2001年、オックスフォード州の選挙区から出馬し、下院議員として初当選する。ジャーナリストとしてのキャリアも続けており、「2足のわらじ」だった。同じ年に議員となったのが、オックスフオード大学の後輩で後に首相となるデービッド・キャメロン氏だ。

ジョンソン氏は保守党の議員としては業績らしい業績を上げておらず、党内の「道化役」という印象が強かった。しかし、2005年にキャメロン氏が保守党党首になると、ジョンソン氏の中で党首さらには首相を目指すという子ども時代からの夢がよみがえってきたようだ。

ロンドン市長を2期務める

それには、政治家として「実績」を積まなければならない。

そこでジョンソン氏は、2008年、ロンドン市長選に立候補。好感度が抜群であることを背景に、見事現職を破った。2016年まで2期を務め、2012年のロンドン五輪・パラリンピックを成功に導いた。今度は国政を目指そうと、ロンドン市長就任で辞めていた下院議員の職を、2015年の総選挙で取り戻した。

さらなる実績を作るため、2016年、EUに残留加盟するか離脱するかの国民投票では離脱運動の主導者として全国を回った。「イギリスを、国民の手に取り戻そう!」とジョンソン氏は有権者に呼びかけた。結果は、僅差ではあったものの、離脱派が勝利。今に続く、ブレグジット劇の始まりである。

キャメロン政権の後を継いだメイ政権で、ジョンソン氏は外相に抜擢されるが、「冗談ばかり言っている人に、外相の職が務まるのか」という大きな懸念があった。

そんな懸念が出るのも、無理はなかった。ジョンソン氏には数々の失言がある。女性蔑視、イスラム教徒への偏見、人種差別主義、大英帝国時代への回帰心などが背後にあるような「うっかり発言」があまりにもありすぎて、深刻な外交問題に発展することを心配せざるをえなかったのである。ジョンソン氏の外相就任に他国の外交官らは失笑したと言う。

「失態」の1つが、イラン系移民の女性がイギリス人の夫とイランを休暇で訪問中にイラン側に逮捕・拘束された事件だ。ジョンソン氏は、逮捕当時、この女性が「ジャーナリストとして研修をしていた」と議会で説明。イラン側は「ジャーナリスト? やっぱりスパイだったのだな」と結論づけ、いまだに彼女はイランから戻れないままとなっている(イランの法廷が反政府プロパガンダに加わった罪で有罪とした)。

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