IMF「ドルは過大評価」でドル円はどう動くか トランプ流は「売り介入」でなく「FRBたたき」
一方、同じく2018年平均の実質実効レートについて中央値で議論した場合、円はマイナス1.5%、ユーロはマイナス3%といずれも過小評価とされた。ESRの定量分析では「プラスマイナス5%の乖離であればおおむねファンダメンタルズに沿っている」という整理になるため、円やユーロについては不均衡がないという解釈になる。
だが、話はそう単純ではない。円について言えば、「実質実効レートに影響する日本の特殊要因(Japan-specific factors that affect the REER)である日米金利差やポートフォリオリバランス効果、円に対する一時的な短期筋のポジションなどを踏まえた結果」とされている。The EBA REER index modelやthe EBA Level modelsに準拠すれば、マイナス17~マイナス22%の過小評価だとされている。IMFの標準的なアプローチでは過小評価となっていることは覚えておいてもよいだろう。
円の実質実効レートに関し過去20年平均と比較した場合は、今年6月時点でマイナス17%である。これは主要通貨ではメキシコペソの次に過小評価である(前掲図)。
ユーロについてIMFとトランプ政権の認識は共通
さらにユーロも難しい事情を含む。あくまで域内全体としては均衡が取れているとしても、加盟国にわたって拡がる「大きな異質性(a large degree of heterogeneity)」について、注記がなされた。具体的にはユーロの実質実効レートはドイツにとってはマイナス8~マイナス18%の過小評価になっており、小さな加盟国にとっては0~プラス10%の過大評価となっていると明記されている。
この点、域内において純債務国(代表的には南欧諸国)は対外競争力を改善する努力が、純債権国(代表的にはドイツ)は内需を刺激する政策が必要と指摘しており、ユーロそれ自体の公正評価をもって域内経済に問題がないわけではないとの評価が見られる。これはアメリカのトランプ政権の本音に近いものであろう。
なお、7月に入ってからアメリカによるドル売り為替介入の可能性を指摘するレポートや報道が話題になっている。ドルの過大評価を指摘する今回のIMF報告書はそうした観測の追い風になっているようにも思えるが、その可能性は低いとみている。
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