参院選「特定枠」の想像以上にひどい現実 自分の名前連呼せず、「付け足し」候補の悲哀
「徳島県枠」の候補となった現職の参院議員、三木亨氏も選挙区候補の支援に徹している。三木氏は2013年に初当選したが、今回は自分の名前の連呼ができないまま当選することになる。次の参院選挙は2025年であるからこのままだと12年間、選挙運動ができない。「自分の名前を覚えてもらえないという不安はある」と語るのも、もっともなことだろう。
もちろん2人は全国を対象とする比例区の候補者だが、地元を出て活動をすることもない。あくまでも特定地域の代表なのである。
新聞に掲載された自民党比例区候補の広告での特定枠候補の扱いもひどいものだ。安倍首相の大きな写真とともに、31人の比例区候補者の顔写真と肩書などが一覧として並んでいる。ところが、特定枠の2人は、最下段に顔写真なしで名前と肩書だけがとってつけたように記されていた。
特定枠候補が受ける、さまざまな冷遇の中身
特定枠候補は当落では優先的扱いを受けるが、選挙中の扱いは完全な付け足しでしかない。そもそも選挙は候補者の名前や顔とともに、政策や主張などを含め、どういう人物かを広く有権者に知ってもらうことで成り立っている。したがって、特定枠のように、意図的に候補者を見えなくするのは選挙とは言えない。そして、大半の有権者は特定枠という複雑怪奇な制度を知る機会もないまま投票日を迎えるだろう。
そもそも特定枠は、参院選で2つの県を1つの選挙区にする合区に伴い、議席がなくなってしまう側からの不満に対応するために作られた制度だ。建前上、自民党は地方を重視しているのだという姿勢を見せることになるはずだが、実際には特定枠候補はさまざまな「冷遇」を受けている。2人の地元支持者は、このことをどこまで知っているのだろうか。
一口に国会議員と言っても現行法では当選の仕方にいくつもの種類がある。衆院議員の場合、①小選挙区で当選②比例区で当選③小選挙区で落選したが、重複立候補した比例区で復活当選、の3種類の議員がいる。参院も①選挙区で当選②比例区で当選③比例区の特定枠で当選、とやはり3種類になる。
どういう選挙で当選しようが議員であることには変わりない。歳費などの差もない。しかし、政治の世界はそれほど単純ではない。とくに長く政権を担っている自民党は複雑である。
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