参院選「特定枠」の想像以上にひどい現実 自分の名前連呼せず、「付け足し」候補の悲哀
衆院議員はまず、小選挙区での当選を最優先する。小選挙区当選議員は比例区議員よりも、ましてや復活当選議員よりも格が上という意識がある。実際、比例区復活当選した議員が、落選した小選挙区での当選者が亡くなったり失職した場合に行われる補欠選挙に、衆院議員を辞職して立候補するというケースは多い。衆院議員をやめて衆院議員の補欠選挙に立候補するというのであるから、わけがわからない話である。
2000年代初め、衆議院の綿貫民輔議長(当時)が、補欠選挙への立候補を理由として、ある衆院議員の辞職願を受理しなかったことがある。残念ながら、綿貫議長の問題提起は真剣には受け止められないまま今日に至っている。
また、自民党内には参議院より衆議院が格上という意識が根強い。これまでの自民党総裁は全員が衆院議員であり、主要派閥の会長も大半が衆院議員だ。閣僚の数も圧倒的に衆院議員が多い。そのため党内で力を持つために参院議員から衆院議員に鞍替えを目指す議員も珍しくない。
背景には参院は「良識の府」であって、権力闘争は衆院議員のやることという不文律のようなものもあるようだ。
その参院で今回誕生する「特定枠議員」が周囲からどう見られるかは明らかだろう。
特定枠候補を増やすこともいずれ限界に
選挙制度は国民が理解しやすい単純なものがよいに決まっている。ところが、自民党は選挙制度を場当たり的に改正し、複雑でわかりにくいものにし続けてきた。その結果、議員の種類が増え、一種の議員格差を生みだし、政治をますますわかりにくくしている。
参院比例区の特定枠は今後どうなっていくのであろうか。東京などごく一部の地域の人口増が続く一方で、大半の地域の人口の減少は続いている。その結果、1票の格差が拡大し続け、遠からず再び違憲状態になってしまうことは確実だ。
ところが議員の既得権を守りたい政治の世界は、最高裁判所が求めるような抜本的改革には手を付けようとしない。自民党は憲法改正で「都道府県から最低1人ずつ、議員を選ぶ」案を盛り込み、1票の格差問題を解消しようと提案しているが、もちろん見通しは立っていない。
人口増の選挙区の議員定数を増やせば違憲状態は一時的には解消できるが、人口減少時代に議員定数を増やすことに国民は納得しないだろう。そうすると、できることは新たな合区を作ること。合区の対象となった県で、自民党は特定枠候補を増やし続けるのだろうか。しかし、非拘束名簿式が原則の比例区の候補者の中に、上位当選が保障される特定枠候補を増やしていくことは、いずれ限界に達するであろう。
1票の格差解消策としての合区は、わかりやすくかつ合理的な制度である。ほかにいい案がないのであれば、特定枠のような余計な手立てを講じず、単純な制度改正を進めていくしかないだろう。
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