あの聖地「タワレコ」に、女子も吸い寄せられる 「足」を運び、撮影、群れて盛り上がれる場所

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武田氏がレコメンドし、音楽ファンに刺さった例として挙げるのは、英国で活動するシンガー・ギタリストのトム・ミッシュ。2018年に発売したアルバム『Geography』は1年以上にわたり、渋谷店で売れ続けている。「お洒落すぎる極上のBGM」として現在も売り出し中だ。

入社以来、インディーズロックを担当してきた武田晃氏。「バイヤーに権限があり、仕入れはかなり自由」と話す。武田氏に商品のおすすめを聞く音楽ファンも多い(記者撮影)

その隣の棚に並ぶHONNEも、武田氏が選んだ英国のエレクトロデュオ。バンド名は日本語の「本音」からとられたものだ。渋谷店で取り上げた当初はほとんど知られていなかったが、現在では日本を飛び越えて韓国でも火がついているという。

こうした知られざるアーティスト、知られざる良作を求めて、音楽ファンは売り場にやってくる。「すべてをネットで発信しているわけではない。店舗も音楽の情報発信の場。これぞと思う作品を並べているので、店に来たらいいことがあると思ってもらえるようにしたい」(武田氏)。

また新人・若手アーティストの発掘やレコメンドも、タワレコの重要な役割である。その象徴が、世間で話題になる前のアーティストの作品をピックアップし、全店でプッシュする企画「タワレコメン」。月1回、全国のバイヤーが集まる会議で、プッシュする作品を決めている。2006年にスタートし、これまでback number神聖かまってちゃんKANA-BOONなど、今では人気となったアーティストをいち早く取り上げてきた。武田氏も多くの作品をタワレコメンに送り込んでいる。音楽メディアは知名度の低いアーティストの作品を扱いにくいため、こちらもショップならではの取り組みだろう。

最近では、コアなファンに向けて、アナログレコードの強化に乗り出している。新品レコードは政令指定都市にある店舗を中心に売り場を広げており、過去5年で売上高は5倍に成長している。

今年3月には新宿店の10階に初のアナログ盤レコード専門店「タワーヴァイナルシンジュク(TOWER VINYL SHINJUKU)」をオープン。7万枚の在庫のうち、中古が4万枚を占める。中古は初めての取り扱いで、徐々に拡充していく構えだ。

聴き放題のストリーミングにどう対抗する?

CD不況の中でも多方面からファンを店頭に呼び込んできたタワレコ。ただし世界の音楽市場は、すでにストリーミング中心に移行している。

国際レコード産業連盟によると2018年の世界の音楽市場は前年比で9.7%成長した。牽引役は有料サブスクリプション(定額課金)ストリーミングで約33%増加。CDなどのパッケージ、ダウンロード販売ともに減少したが、これを補い、ストリーミングによる収益は全体の半分に迫る勢いである。

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