ポルシェやアウディが「SUVクーペ」投入の理由 人気の高いSUVカテゴリーで細分化が進む

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ポルシェとアウディの昨年の世界販売台数を見ると、国別で最高の数字を挙げたのはどちらも中国で、全体の約3分の1を占めている。強固なブランドイメージを持つ欧州車であっても、巨大マーケットで販売台数を伸ばしたいのであれば、彼らの趣味嗜好に沿ったクルマづくりが求められるのは当然だ。

アウディ「Q8」の後ろ姿(筆者撮影)

価格についても触れておこう。Q8のベースグレードである3リッターV型6気筒ターボエンジン搭載の 55 TFSIクワトロを、同じエンジンを積むQ7を比べると、Q7が938万円、Q8が992万円で乗車定員が少ないQ8のほうが高い。カイエンはさらに明白で、3リッターV6ターボエンジンを積むベースグレードで比較すると、1012万円に対してクーペは1115万円となる。

セダンやワゴンに対するSUVと同じように、クーペもまた付加価値型商品である。この位置付けを確立したのはそもそも欧米で、日本車の例として挙げたカローラもそうだった。セダンのような実用重視ではなく、デザインや走りを楽しむ車種という位置付けが、贅沢なクルマというイメージを生み、高めの値付けにつながった。2台のSUVクーペもこの図式の上にある。

富裕層の欲求を高いレベルで満足させる

われわれ庶民にとっては高価であることはデメリットだが、このクラスのSUVの主な顧客である富裕層にとっては、格上のクルマに乗っていることをアピールできるというメリットにもなる。いいものを買ったと顧客に実感させることは、マーケティングでは重要だろう。

従来のクーペも同様の位置付けだったが、使い勝手に難があった。とりわけ2/3ドアは使い勝手が悪かった。その点SUVクーペは車高が高めなので乗り降りは楽であり、室内は広く、目線が高いので運転はしやすい。

もちろんそれは、同じクラスの既存のクーペと比べた場合である。カイエンやQ7にも言えることだが、5m近い全長、2m近い全幅は日本の道路事情に合っているとは言えない。車両重量はどちらも2t以上なので、経済性は期待できないし、環境負荷も高い。

クルマはそういった社会環境を考えて選んだほうが幸せになれるはずだと、庶民のひとりとして思うが、一方でSUVクーペというジャンルが、富裕層の欲求を高いレベルで満足させる車種であることも確かである。

森口 将之 モビリティジャーナリスト

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もりぐち まさゆき / Masayuki Moriguchi

1962年生まれ。モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書に『富山から拡がる交通革命』(交通新聞社新書)。

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