「本業消滅」を乗り越えた企業の"重要な共通点"

事業が衰退期を迎えたとき何をするべきか

(1)遠そうで近いもの

富士フイルムが化粧品・医薬品へ進出したり、紡績の日清紡がブレーキへ進出したことは、ルメルトの定義によれば、非関連多角化と言えるかもしれない。非関連多角化は、関連多角化に比べてリスクが高いと言われているが、両事業は軌道に乗っている。

これらの多角化は、業種的には非関連に入るが、コア・テクノロジーは本業で培ったものを応用でき、技術面での関連は高いと位置づけられる。

他社の例として、花王がフロッピーディスクに参入したとき、世間では、「石鹸の花王がフロッピーを作ってもうまくいくわけがない」「ドライブに入れたら、泡を吹くのでは?」と揶揄されたが、花王のフロッピーディスクは、後発にもかかわらず、世界のトップシェアになった。

確かにトイレタリーと情報メディアの市場はまったく非関連であるが、両者は界面活性技術というコア・テクノロジーが共通であった。

こう述べると、「カネボウも非関連分野に多角化したが、なぜ化粧品以外はうまくいかなかったのか?」といった疑問が出てくるかもしれない。

しかしカネボウの異分野(食品、不動産、薬品)への進出プロセスを見ると、ほとんどが買収によるものであり、市場の関連性はおろか、技術の関連性もなかった。市場と技術の双方で関連のない多角化は、やはり難しいと言えよう。

最近ではライザップが、本業のフィットネスとは市場も技術も無関連な、業績が悪化した異業種の企業に目をつけ、負ののれんを活用してM&Aを続けてきたが、このやり方も早々に破綻を示した。

市場や業種から見れば遠いものであっても、外からは見えないコア・テクノロジーでシナジーが見込める事業の場合は、「遠そうで近い事業」として、成功への道は開かれているのである。

関連事業の多角化に潜むリスク

(2)近そうで遠いもの

逆に、関連多角化のリスクが低いかと言うと、必ずしもそうとは言えない。

例えばアメリカのコンチネンタル航空は、LCC(格安航空会社)のコンチネンタル・ライトを設立した。高まる低価格ニーズに対応するためであり、座席予約やマイルのシステムはコンチネンタル航空と共用し、コストを下げる狙いであった。多角化の理論から言えば、コンチネンタル・ライトは関連多角化であり、リスクは低いはずであった。

しかしコンチネンタル・ライトは2年で幕を閉じた。フルサービスの会社がLCCを経営するのは容易そうに見えたが、低コストで運営するためには、フルサービスとはまったく違う発想が必要であった。

さらにコストの共有を狙った座席予約やマイルのシステムも、フルサービス事業の重いコストの共有にほかならず、「コストはフルサービスと同じくらいかかり、収入は半分」というビジネスモデルになってしまったのである(なお、フルサービスのコンチネンタル航空も、ユナイテッド航空に経営統合されてしまった)。

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