3月危機が始まった--受注半減!!倒産列島・日本を歩く

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 トヨタ自動車は09年3月期、昨年度の過去最高益から一転、1500億円の連結営業赤字となる見通しを公表。その後、さらに下方修正し、赤字額は4500億円にまで膨らむ見通し。おひざ元の愛知県は全国の中でも特に景気の落ち込みが激しい。これまでトヨタ頼みで好景気を謳歌してきただけに、その落差の激しさが県内中小企業をパニック状態に陥れている。

「銀行は、中小企業を潰すなというプレッシャーを受けているのだろうが、返す当てのない先には貸せないだろう。一気に直下型地震がやってきたようで、私どもも何をしていいかわからない」と、先の商工関係者は力なくつぶやく。

一時休業などによる手当の一部助成を受けようと、愛知労働局の雇用調整助成金の窓口には、申請手続きにやってきた事業主が殺到。「職員が出勤する前に30~40人並んでいるのは当たり前で、エレベーターが開いた瞬間、事業主があふれ出るような状態。申請を受け付けるだけで手いっぱいで、とても助成金の支給決定には手が回らない」(担当者)と、すでにパンク状態だ。

大手企業がカンバン方式を採用していると、下請けは在庫を相当量抱えざるをえないうえ、生産計画も大手企業頼み。最近では大手企業がこれまで外注していた仕事を内製化するようになり、仕事が余計に減少する--。こうした中小企業特有の事情も、不況への抵抗力を弱める一因になっている。

食えない税理士も急増 崩れる中小企業の石垣

日本の場合、中小企業の経営指南役も兼ねてきたのが税理士だった。都内のある税理士は「昨年の10月までは割とのんびりしていたが、ここへ来て先行きの見通しも立たないので会社を畳もうかという話を聞く。こんなに短い期間で悪くなるのは初めてのこと」と、顧問先の経営を心配している。

税理士の顧客はほぼ100%が中小企業。その中小企業の勢いのなさを反映してか、最近若い税理士は大手事務所に所属するようになり、定年前の早期退職が当たり前だった税務署OBも、「独立しても食えない」と、定年まで勤めてから開業するようになっているという。

日本商工会議所の永野重雄元会頭(故人)はかつて、中小企業を日本経済の「石垣」に例えた。曰(いわ)く、数百年の風雪に耐えてもびくともしない石垣は、色や形の異なる大小さまざまな石が組み合わさってできている。国の経済も、大企業や中小零細企業が相互補完し合ってこそ、力強い発展を続けることができる--。

『中小企業白書』によると、国内の中小企業数は86年から06年までの20年間で、532万社から419万社へ2割強も減少した。世界金融危機という大津波を受け、中小企業はどこまで生き残れるのか。日本経済を支える「石垣」はいま音を立てて崩れようとしている。

(週刊東洋経済)

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