シンガポール人が給料の3分の1も貯金する訳 「老後2000万円問題」を嘆く前にやるべきこと
さっきの資産運用セミナーで隣り合わせた女性たちとお話ししたところ、「今はマーケットが不安定なので株式投資などはせずに、国の老後制度や預貯金、養老保険を中心に老後設計をしている」そうです。私が「仮想通貨(暗号資産)に投資をしている」と言うと、「えっ!」と驚いた感じでした。中華系の男性に話すと「いつ、いくらで買った」と必ず聞かれ、それだけで話がしばらく弾むのですが……。
その後、女性たちと一緒に帰りましたが、ワインを飲んだりしてもタクシーは使わず、バスを乗り継いで帰ると言います。シンガポールではタクシー代が非常に安く、加えて国土も狭いです。10分程度の距離ならタクシーで数百円で自宅に帰ることができるのに、30分以上かけて公共の交通機関と徒歩で帰るというのです。
実際、そういう富裕層や準富裕層が多いのです。私も、彼らと仲良くしていて身につまされるようになり、急いでいるとき以外は公共の交通機関を利用するようになりました。
国の制度で年金を積み立て、不足分は自力で補う
シンガポールの個人所得税や法人税の税率は日本に比べると圧倒的に低く、相続税や贈与税もありません。一方で、社会保障は日本のように手厚くなく、医療費の自己負担率は6割程度(日本は13%程度)です。老後の年金制度は、「積み立て方式」で、自分の年金を自分で積み立てるという仕組み。イメージ的に確定拠出年金に近いです。
対する日本は「賦課方式」で、現役世代が支払った保険料がそのときの年金受給者に支払われる仕組みです。「積み立て方式」の場合、受給額が積立額より少なくなることはありませんが、それだけで暮らせるほどの金額が用意しづらいのはデメリットです。
シンガポールの年金制度としては、中央積立基金という強制貯蓄の仕組みがあり、医療費用、持ち家取得、老後生活に備えます。55歳以下の労働者は収入の20%、雇用者は17%を拠出します。シンガポールの国民や永住者は、月収の約2割を中央積立基金に、そのほかにも月収の1~2割を老後のために別途備えています。国の制度は変わることもあるので、「同額を別途自分でも貯めておきたい」と話す人もいます。
強制貯蓄制度に最大限払い込んだとしても、老後に受け取れる金額は月20万円弱です。強制貯蓄制度に貯めたお金を、住宅取得や医療などほかの目的にも使うこともあるので、自力でも貯めないと老後の生活はおぼつかないといいます。多くのシンガポーリアンは持ち家ですが、それでも老後のお金は年金だけでは十分ではないために共働きをしたり、長く働いたり、自分たちでも別途老後の貯蓄をつくっていて、非常に堅実だと感じます。
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