偽ブランド品の横行が「昭和に逆戻り」する事情 規制強化しても輸入が後を絶たない根本理由

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ブランドや状況により異なるが、鑑定にかかる時間は写真撮影後わずか数十秒。判断がつかない不明品や非対応商品は人の目でも確認して営業時間内であれば30分以内に鑑定結果を表示する。的中率99.1%(同社発表)で、万が一偽物だった場合には補償を行っている。

エントルピーの専用機器を用いたデモの様子(筆者撮影)

従来の鑑定手法とは異なり、偽物の特徴ではなく本物の特徴と異なる点を探す。300万枚以上の教師データを使い構築した。現在対応するのは15ブランドで今後も拡大を目指している。

エントルピーの日本代表の浅岡範子氏も実感として、「CtoCやボーダーレス取引で偽造品が拡大」していると指摘する。

消費者意識にも変化が出ているようだ。ブランドリユースの国内最大手コメ兵も2017年からフリマアプリ「KANTE」を運用する。購入時に不安があればコメ兵に鑑定を依頼できる仕組みがあり、鑑定の利用率は8割と高く安心を求める消費者心理がうかがえる。

市場の正常化は難しい

各社のこうした取り組みはもちろん重要だが、現状は蛇口を開いたまま風呂の水をかき出しているようなもので根本解決にはつながらない。“個人輸入”という名の下に偽ブランド品が流入し続けては市場の正常化は難しい。

一方、商標の登録、権利内容、保護を定めた商標法は企業活動を規制することを前提とする経済法だ。知的財産法に詳しい早稲田大学大学院法務研究科の上野達弘教授は、「この問題は15年以上前から政府でも議論されているもの。個人の行為が規制の対象外とされてきたことは、それなりの重みがある。ただ、個人輸入に見せかけた業者による輸入があるとすれば、これを取り締まることが求められるのではないか」と語る。

特許庁のアンケート調査では20代の男女の約8割が偽ブランド品を友人が披露したら、嫌な気がすると回答した。多くの消費者が偽ブランド品に否定的であっても、一部の「それでもいい」という消費者や、詐欺的な販売業者によって流入が起きている。

偽ブランド品をあの手この手で輸入する人や業者、偽ブランド品とわかって買う消費者らを消費者保護の名の下で厳しく取り締まらない結果、買いたくない人が被害を受ける現状はやはりおかしい。だが、現状では個人輸入は違法ではない。根本的な解決には個人向け規制の強化や消費者・プラットフォーマーなど各プレーヤーの意識向上が必要だ。

中野 大樹 東洋経済 記者

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なかの たいじゅ / Taiju Nakano

大阪府出身。早稲田大学法学部卒。副専攻として同大学でジャーナリズムを修了。学生時代リユース業界専門新聞の「リサイクル通信」・地域メディアの「高田馬場新聞」で、リユース業界や地域の居酒屋を取材。無人島研究会に所属していた。趣味は飲み歩きと読書、アウトドア、離島。コンビニ業界を担当。

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