東大教授が教える「文系人が数学を楽しむ方法」 "数学アレルギー"のままではもったいない

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私の好きな言葉に「Stand on the shoulder of giants.(巨人の肩の上に立つ)」というものがあります。

これは、万有引力を見つけたことで有名なアイザック・ニュートンの言葉で、「なぜあなたはこんなにすごいことを発見できたのですか?」と聞かれたときに、ニュートンは「僕は巨人の肩の上に立っていたから遠くを見通せただけだ。僕がすごいんじゃなくて、昔の人たちがすごいんだ」と答えたのです。

過去の偉人たちの天才的な閃きや努力で、人類はどんどん新しいことを学び、発見してきました。「人類の叡智とは積み上げである」ということですね。昔の人たちが頑張ってくれたおかげで今の快適な社会があるのです。

数学では、先人たちが導き出し、証明してくれたツールを一からすべて作っていくのは無理なので、「ここにこういうものを当てはめると、こういうことが導き出せる」ということで、素直に使わせてもらっているわけです。

私たち人間は、そういう一種の「叡智のバトン」を受け継いできています。それが、人間の強みでもあります。偉人からのバトンを受け取るこの行為が「勉強」であって、そのバトンを使って新たな課題解決に挑戦することが「研究」や「開発」や「思考」ということです。ですから、恥ずかしがらずに堂々とショートカットしてください。

二次方程式もピタゴラスの定理も、「とりあえず巨人の肩に乗るか?」ということで、ささっと使ってしまいましょう。また使っていくうちにより深くわかってきます。

まずは記号を「それっぽく」描いてみよう

数学というものは「一種のゲーム」です。最終的な目標は何かしらの課題を解決することなのですが、その過程は謎解きゲームであって、細やかな決まり事や手続きの仕方がたくさん定められているのです。それを組み合わせながら問題を解いていく。

「数学の記号が苦手なんだよね……」という人が多いですが、実はその何千人もの偉人の屍の上にできた記号にこそ、数学のパワーが凝縮されているんです。その意味はあとで考えるとして(笑)、まずはペンを持ってください。そして、記号をカッコよく描いてみようじゃありませんか。

①ルート √

いきなりクイズです。「ある同じ数をかけたら、4になった。その数は何でしょう?」この答えは一瞬で「2」とわかりますね。「2×2=4」だからです。

それでは、次の問題。「同じ数をかけたら3になった。その数は何でしょう?」と問われたらどうでしょうか? 今度は一瞬、「うっ」となりませんか? 「2より小さいから、1.5ぐらいか?」と考えていくと、答えに近づいていきますが、実はこうやってアタリをつけて解いたところで、一生かかっても終わりません。正解は「ルート3」です。√3とカッコよく描いてみてください。

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