アイブ氏が去ったアップルは、どうなるのか? 27年間iPhoneやMacのデザインを手掛けた
アップルの復活とMac、iPod、iPhoneへと続くヒットにはさまざまな要因があったが、象徴的とされているのが工業デザインだった。背後にテクノロジーへの強いこだわりがあるが、それらをシンプルに包み込んで消費者に届け、エレクトロニクス製品をより身近にしながら消費されないモノへと昇華させた点が光る。
アップル製品のデザインは、1つずつがアップルのアイコンとなっており、デザイン主導によって製品力とブランドを高めていった点は「ジョブズ・アイブ時代」のアップルの成功の法則だった。
Apple Parkという転機
アイブ氏に絶大な信頼を置いていたスティーブ・ジョブズ氏が2011年に他界し、アップルは現在のティム・クックCEOに引き継がれた。ジョブズ時代に登場したiPhoneのビジネスは成長を続け、ついに2018年にはアップルを、アメリカ企業として初めて時価総額1兆ドルの企業へと導いた。
よく「ジョブズ亡き後」のアップルについて、悲観的な見方をするファンも少なくないが、クック氏はむしろ、ジョブズ・アイブ時代に築いてきたiPhoneを中心としたビジネスを、一切間違わず、利益を最大化することに努めてきたと評価できる。
クック氏とアイブ氏の体制になっても、Apple WatchやiPhone Xなどの新しいフォームファクターを持つ製品が生み出されており、むしろアイブ氏らしいデザインが強まったのではないか、と感じる。
その一方で、ジョブズ氏が生前最後に取り組んできたアップルの新しい本社、Apple Parkに携わったアイブ氏は、エレクトロニクス製品ではない、より巨大な建築のデザインに関わった。そこにはさまざまな新しい出会いがあったはずだ。
ファッションブランドBurberryからアップルに転職し、すでにAirbnbへ移籍した、小売を担当する元上級副社長、アンジェラ・アーレンツ氏。タウンスクエアと呼ばれる新しいコンセプトのApple Storeの設計や、そこに置かれる什器などは、Apple Parkとともに、人が活動する空間をデザインする取り組みだった。
そしてオバマ政権下でアメリカ環境保護庁の長官を務め、2013年にアップルに移籍した女性科学者、リサ・ジャクソン氏。アップルを再生可能エネルギー100%で運営し、将来的にはすべてリサイクル資源で新製品を作るという「バカげたアイデア」(ジャクソン氏談)にむけて着々と歩みを進めている。
巨大な発電設備を備えるApple Parkも、昨年10月に発売された100%再生アルミニウムを活用したMacBook Airも、地球環境という新しいテーマで世界をリードする存在となった。
工業デザインから、人が過ごす空間とそれ全体を包み込む地球環境へ。そんなシフトを読み取ることができ、ジョブズ・アイブ時代とは異なるパラダイムが、アップルにはすでに訪れている。
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