つくばエクスプレス「8両化」なぜ10年もかかる? 自慢の地下・高架線がネック、完了は2030年代

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8両化に向けてホーム延伸が必要なのは、すでに拡張済みの南流山駅を除く19駅。うち地下駅が7駅、高架駅が11駅、掘割の駅が1駅(みらい平)だ。単純計算すれば、1年に2駅ずつ工事に着手しても10年強かかること
になる。今年はすでに秋葉原駅と御徒町駅でホームの延伸工事に着手している。通常の保守作業もあるため、ペースを上げるのは難しそうだ。

まず快速などの停車駅を優先してホームを延伸し、これらの列車を先に8両化することも考えられそうだが、担当者は「(工期の短縮に)得策ではないだろう」とする。一部でも8両編成を走らせる場合、「地下駅については通過駅も含めて全駅を8両分のホームにしないと、火災などの際の避難に問題がある」ためだ。

来春に予定している「25本化」でいったんは落ち着くものの、その後は8両化の完成まで再び悪化が予想されるTXの混雑。沿線自治体関係者は「今後は8両化の早期実現と、それまでの間の混雑緩和策をお願いしていきたい」と語る。

常磐線より混む「常磐新線」

TXは、常磐線の混雑緩和を図る「常磐新線」として計画された路線だ。宅地開発と鉄道整備の一体的な推進による「秩序ある発展」を目的とした法律の適用を受けて建設されたが、その需要予測は計画段階から何度も変わってきた。

開業直後の守谷駅ホームの様子。当初から通勤利用者は多かった(撮影:尾形文繁)

路線免許を取得した1992年の時点では、2000年の開業時に1日当たり輸送人員47万5000人、10年後には57万6000人を見込み、車両は10両編成の計画だった。

その後の状況の変化で開業年は2005年に延期され、1日当たり輸送人員の見通しも開業5年後に38万人へ、さらにその後同27万人へと下方修正し、車両編成も6両へ短縮。しかし、実際に開業すると利用者は予想を上回るペースで順調に伸び続けた。今や常磐線を上回る混雑率は、順調さの裏返しともいえる。

会社側は「ほかの路線の混雑率と比べて劣らないようにすることが、今後も沿線の魅力を高めていくために重要なポイント」と話す。一方で、8両化による混雑緩和を果たしたその先には人口減少の到来も確実に見えている。8両化の前倒しは一筋縄ではいかなそうだが、多額の投資を有効に活かすには、少しでも早められるに越したことはない。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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