つくばエクスプレス「8両化」なぜ10年もかかる?

自慢の地下・高架線がネック、完了は2030年代

ホームや車両の留置線延伸、変電所の増強などに必要な事業費は約360億円で、全額を同社が負担する。車両の導入費用はこれとは別で、今後の需要動向を見ながら必要な車両数などを検討するという。

これまで要望を続けてきた沿線自治体関係者は、「混雑緩和へ大進歩」(埼玉県八潮市の交通担当者)などと8両化事業の決定を評価する。

ただ、実現が2030年代前半となる点については「せっかく大規模な投資をしていただくので、できればもっと早くなれば……」(流山市の担当者)、「本音を言えば今すぐにでもしてほしいところ」(ほかの自治体関係者)などとの声が聞かれる。自治体の多くは、人口のピークを2025年~2035年の間に迎えると予測しているためだ。

全線地下と高架がネックに

10年を超す工事期間について、会社側は「できるだけ早く8両化したいと思っているが、いろいろな制約条件があるためこの程度の期間かかってしまう」と説明する。終電から始発までの限られた時間での作業になるのはほかの鉄道でも同じだが、TXの場合、ネックとなるのは全線が高架とトンネルであることだ。

地下駅の工事は1駅当たり2年弱かかる見込み。工事そのものに加え、時間を要するのは資材の運搬だ。地下のホーム延伸に使う鉄骨や床板などの重量物は保守用車両を使って運び込むしかないが、資材の積み込みができるのは秋葉原駅から約40km離れた守谷総合基地だけだ。

三郷中央駅のつくば寄りには8両化に備えてホームを延ばせるよう、当初から鉄骨が建っている(記者撮影)

首都圏の通勤鉄道で最速を誇るTXだが、保守用車両のスピードは最大でも時速30km程度で、「平均時速だともっと低い」(担当者)。秋葉原駅など都心寄りの駅だと一晩ではたどり着けないため、北千住の保守基地にいったん運んだうえで翌日の夜に現場へ搬入する。結果的に、土木工事に必要な資材の運搬だけで40日程度はかかるという。基地に近い駅なら運搬期間は短縮できそうだが、地下駅の大半は都心寄りの区間にある。

一方、高架駅については「周囲に建物が少ない駅ならクレーンなどで搬入することも考えられる」(担当者)。だが、高架駅はホームの屋根設置や延伸部分の防音壁撤去などが必要になるほか、新たにホームを支える桁を建てなければならないケースもある。「工事のノウハウ蓄積が工期短縮につながることに期待している」と担当者は話すが、現時点で工期は地下駅と大きくは変わらない見込みだ。

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