強まる金融3社の経営介入 三洋電機 “井植一族追放”へ

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再建を支援する金融団が敏雅氏を見限った理由

 当初、金融3社の間では三洋の再建の布陣をめぐって考え方に大きな相違があった。GSはすでに増資引き受け時点で野中、敏雅氏両名の退陣を主張。一方、三井住友銀にはそこまでの過激な考えはなかった。「銀行が証券会社とグルになって経営陣を追い出した」と世間に受け取られる事態は避けたかったうえ、井植家と長年にわたって蜜月関係にあったがゆえのしがらみもあったのだろう。敏雅氏自身の経営能力にも一定の評価を与えていた。 三井住友銀グループが4割出資する大和証券SMBCも、銀行の考えに近かった。「野中会長は論外だが、敏雅氏は各事業について非常に詳しく、能力はある人物だと聞いている。野中会長が持つ権限も敏雅氏に集中させ、唯一の経営トップとして彼に再建を進めてもらう」。三洋の増資引き受けを決めた直後、同社幹部はこう語っていたほどだ。実際、野中会長はCEOの肩書を失い、経営の実務は井植社長が一手に背負った。 

 ではなぜ、その三井住友銀と大和証券SMBCさえも、わずか1年で敏雅氏を見限ったのか。「構造改革の中身をめぐる議論において、大株主との間で多くの価値観の違いがあった」と敏雅氏は会見で吐露した。AV機器や白モノ家電などの赤字事業についても単純な撤退ではなく、合弁化や提携などによる止血策を模索した敏雅氏。創業家ゆえに事業に対する思い入れが強いうえ、雇用への影響を最小限にとどめたかったからだ。が、提携等の具体策が決まるまで時間を要し、決まった案件も収益への効果が疑問視された。

 赤字事業への対応策に手間取る間に、携帯電話やデジカメ事業も収益が悪化。昨年11月には06年度の業績見通しについて500億円の最終赤字への修正を余儀なくされ、みずから作った再建計画と足元の業績が大きく乖離。さすがに危機感を強めた金融団は携帯電話事業などからの撤退を含めた抜本的なリストラを求めたが、敏雅氏は依然としてすんなりと首を縦には振らない。

 そうした態度に三井住友銀も見切りをつけ始め、2月には敏雅氏の更迭を真剣に検討し始めたようだ。さらに同月下旬には過年度決算をめぐる不正会計の問題が発覚し、敏雅氏の社長辞任への外堀は埋まった。金融団のある関係者が言う。「業績の回復が遅れ、株主の意見にも耳を傾けないというのであれば、辞めていただくのは当然のことだ」。

 創業一族が経営トップから外れ、三洋の再建は完全に金融3社に主導権が移った。新社長となる佐野氏は「事業売却は従業員にも多くの影響を与えるので、この場で軽々しく口にすべきことじゃない」と語るにとどめた。今後は、金融団が撤退を求めている携帯電話事業などの処遇が大きな焦点となる。

(書き手:渡辺清治)

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