「米利下げなら必ず円高になる」とは限らない  為替は再び1ドル=104円台へ向かうのか?

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 6月20日、「米利下げなら円高」というパターンが、繰り返されるとは限らない。過去の米利下げ局面では、円安が進んだケースもある。写真は都内で2017年1月撮影(2019年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 20日 ロイター] - 「米利下げなら円高」というパターンが、繰り返されるとは限らない。過去の米利下げ局面では、円安が進んだケースもある。今回も、金融緩和による景気や株価の押し上げ効果に市場の注目が集まれば、リスクオンによる円安が進む可能性がある。市場の利下げ期待がやや過剰との見方もあり、円高進行か円安反転か、決め手は見えていない。

FOMCメンバー、利下げ予想は17人中8人

市場は、米利下げ期待をすでに相当織り込んでいる。CMEグループのフェドウォッチによると、米連邦公開市場委員会(FOMC)後の金利先物市場では、年末までに0.75%、0.25%刻みなら3回分の利下げを織り込んでいる。

しかし、今回のFOMCで示された金利見通し(ドットチャート)では、メンバー17人のうち、年末までに政策金利を0.5%ポイント引き下げることが適切との見解を表明したのは、半数以下の7人(もう1人は0.25%ポイントの利下げ)にすぎない。

10年米国債利回り<US10YT=RR>は16年11月以来となる2%割れまで低下したが、市場はかなりの利下げを織り込んだため、今後の金利低下余地はそれほど大きくないとの見方も少なくない。ドル/円<JPY=EBS>を押し下げる米金利低下が止まれば、円高も進みにくい。

株高期待も円高進行を妨げる。米連邦準備理事会(FRB)により積極的かつ予防的な利下げが米経済を下支えするなら、高金利通貨などのリスク資産買いとともに、リスクオンの円売りが活発となるシナリオも描ける。実際、19日の米株市場では、S&P500<.SPX>とダウ<.DJI>が、過去最高値まで1%足らずの水準に迫った。

みずほ証券・チーフ為替ストラテジストの⼭本雅⽂氏は「金融緩和の波及経路である金利は、各国とも低下余地が乏しく、相次ぐハト派化で通貨安も進みづらい。しかし、株高を通じた資産効果チャネルが、働く可能性は残されている。株高は投資家のリスクテイク姿勢の強まりを通じ、円など低金利通貨の下落要因となる」との見方を示す。

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