「米利下げなら必ず円高になる」とは限らない  為替は再び1ドル=104円台へ向かうのか?

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過去の米連続利下げ局面と、ドル/円の関係を振り返っても、利下げとドル安/円高は必ずしも直結していない。89年以降、FRBが連続利下げを実施した5回中、ドル/円が下落したのは3回だけ。95年と2001年はともに上昇している。

「米利下げは円高」との印象が強いのは、リーマン・ショック後の記憶が鮮烈かつ新しいせいかもしれない。07年から08年にかけて5%の利下げが行われた際、日経平均<.N225>は7000円台を割り込むまで売られ、ドルは90円台まで急落した。

しかし、当時と異なるのは、投機筋のポジションだ。金融危機前は、日本の物価は上がらないまま緩やかな成長が続き、ヘッジファンドなどは低金利の円を売り、高金利通貨建て資産へ投資する円キャリートレードを大量に行っていた。

米商品先物取引委員会(CFTC)が集計する投機筋の円売りも、過去最大に膨らんでいた。だが、直近の円売りの規模は、当時の3分の1程度。「リスク回避で円が買われるのは、その前にリスクオンで円が売られていたためだ。最近はリスクオンの円売りが進まないので、リスク回避になっても買う円がない」(外銀幹部)という。

本格的な利下げなら、ドル104円も

とはいえ、今後、FRBが市場の期待に沿うように連続利下げモードに入れば、円高が再開する可能性もある。欧米だけでなく世界的に金融緩和に動いているのは、本格的な景気減速懸念が背景にあるからだ。

20日の外為市場では「FRBの金融緩和はドルを押し下げる。底堅く推移する場面があれば、夏場に向けて絶好の売り場となる」(外銀)との声が広がった。ドルは107.55円まで下落し、1月以来の安値を付けた。

ドルの全般的な値動きを示すドル指数<.DXY>は、利下げ観測が高まってきた5月下旬から低下基調に入っている。それまでは投資家のリスク回避姿勢が高まる場面でドルと円が買われてきたが、その頃からドル買いの勢いは少しずつ失速。均衡が崩れるなか、円のじり高が目立つようになってきた。

ドル/円は、今月5日の直近安値を下回ったことでテクニカル的にも下支えを失った状態であり「1月の円暴騰時に付けた104円台も見えてきた」(トレーダー)との声も出ている。

現在のフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は2.25─2.50%。1回につき0.25%ポイントなら9回の利下げが可能だ。「予防的」な利下げで済むのか。それとも、市場の予想を上回るような本格的な利下げ局面に入るのか。それ次第でドル/円の方向性も決まることになりそうだ。

 

(基太村真司 編集:伊賀大記)

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