「発言小町」読売新聞社が手がける掲示板の実像 1日2000件の投稿が語る女性の本音

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――ネット掲示板ならではの雰囲気が醸し出されるいいトピですね(笑)。ほかに印象的だったのは?

2011年5月、東日本大震災で二人のお子さんを亡くされた方から投稿された「子供を亡くしました。昔話を探しています」というトピ。涙なしには読めませんでした。「悲しみの中、たまたまラジオで耳にした童話が、子どもたちを象徴するようで気になって仕方がない。何の童話か知っていますか?」という内容の投稿で。たくさんの人がレスを交わし合う中で、最終的にその童話を見つけてくれるんです。

他人に言えない悩みを受け止める掲示板であり続けたい

――拝読しましたが、涙が止まりませんでした。

あの流れは本当に温かいですよね。

考えさせられるトピだと、2018年の発言小町大賞で「負けないで賞」を受賞した「障害者のきょうだいは必ず受け入れなくちゃならないの?」というのがあります。こういう悩みって、やっぱり現実社会では正面から言えないものだと思うんです。この掲示板が安心して発言できる場所だからこそ、言えたんじゃないかな。

世間一般の常識の枠の中で考えて、「この悩みは他人には言ってはいけない」とずっと苦しんでいた人だと思うんです。その悩みをちゃんと受け止められる掲示板であったことが、自画自賛になりますが、改めてすごいなと。

誰にも言えない悩みを、専門の相談機関にぶつけるという選択もありますが、別の選択肢として発言小町が役に立っていると感じられた瞬間でしたね。単なる井戸端会議の場ではあるんだけど、それが誰かの力になっていると感じられるのは、私たちにとって本当にうれしいことなんです。

――記念すべき20周年を機に、これから発言小町が目指すことはあるのでしょうか。

これまで発言小町は、いい意味での「オールドメディア」として受け入れられてきました。基本的なスタンスはこれからも変わらないと思いますが、やはり20周年の節目なので、2019年はもっと多くの方に発言小町を知っていただきたいですね。そのため、社外ともどんどんコラボして、新しい取り組みができればいいなと考えています。

ただ、オールドメディアが作っているオールドメディアっぽい掲示板というテイストは変えたくない。例えば、「トピに写真を入れない」というのは今後も変えない方針です。見た目を向上させつつ、知恵を絞っていきたいです。

時代がどんなに巡っても、きっと「井戸端会議」の場ってなくならないと思うんです。そんなある種の安心できる場所を、いつまでも提供し続けられる掲示板サービスでありたいと思っています。

取材・文:波多野友子/編集:ノオト

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