「発言小町」読売新聞社が手がける掲示板の実像 1日2000件の投稿が語る女性の本音
――この20年間で、女性を取り巻く環境は大きく変わったと感じます。投稿を見ていて、時代の変化を感じることはありますか?
時代とともに悩みの背景となる社会状況やコミュニケーションツールは変わってきています。例えば、シングルマザーからの投稿が増えたり、「LINEでうまく男性と会話ができない」という投稿が出てきたり。「離婚するべきかどうか」という相談に対して、「別れちゃえ」という意見はおそらく昔より増えている。
ただ、悩みの根源にあるのは、「身近な人とのコミュニケーション」がメインで、そこはまったく変わっていません。誰かと「つながれている・つながれていない」を含めた人間関係や、社会通念と自分を照らし合わせてどうなのか、など。誰にも言えなかったことを打ち明けて、それに対して様々な意見が寄せられる。人間の根本的な悩みって、案外普遍的なものじゃないかと思うんです。だからこそ、発言小町が20年間使われ続けているのだと感じます。
――投稿者の属性が気になったのですが、どんな方が投稿されているんでしょうか。
実は私たちは、あえて投稿者の属性データを取っていないんです。みなさん、トピやレスの中で「30代、会社員です」「地方に住んでいます」「家族構成は〜〜です」とか自己紹介を書いているので、そこでしか把握していない。だから、統計的なことはお答えしにくいんですよね。
「興味のない情報」に触れる場所は必要だと思う
――データ分析やマーケティングをしていない。
マネタイズの観点で見れば、必要かもしれませんし、私自身も悩むところではあります。ただ、それをやってしまうと、ユーザーが居心地のいい空間ではなくなってしまうのではないか、とも思うんですね。
現状、読売新聞社としては、オープンで匿名性がありつつ、ユーザーを傷つけたり追い込んだりしない場所として発言小町を運営しています。属性を取らないから、みんな自由に、ルールに逸脱しない範囲で、好き勝手にやってください、と。矛盾するところもありますが、そこに発言小町の良さがあるのではないかとも思っています。
――発言小町がデータドリブンなサービスに変わってしまったら、古くからのファンは戸惑うかもしれません。
ネットでニュースを見ていると、関連記事やサイトが次々に出てくるじゃないですか。読者の嗜好(しこう)に合わせる点では優れたシステムです。ただ、新聞特有の考え方かもしれませんが、ページを開いてみないとわからない、「興味のない情報」に触れる場所ってやっぱり必要だと思うんです。
――それこそ発言小町の投稿を見ていると、次々に興味深い投稿をみつけてしまって……。
基本スタンスは「井戸端会議」ですからね。聞くつもりのなかった情報も、耳に入ってきてしまう。興味のないテーマだけど、ちょっと読んでみたらすごくドラマチックで、涙を誘われたり、コメントで共感したり、ほっこりしたり。
例えば、「電車男」という作品が流行した頃、発言小町でも、トピ主(※親トピの投稿者)の恋愛を応援するトピがよく立っていたんですよ。