マニア増殖する、「知的書評合戦」 ビブリオバトルの魅力とは?

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授業の一環として取り入れているのは、京都府の向日市立西ノ岡中学校だ。4分の短縮版で、班などの単位で行う。

「自分の考えを言葉できちんと伝えることは非常に大切な勉強。ビブリオはその一環として全校で取り組んでいる」(三輪秀文校長)

「当社はビブリオバトルを取り入れた企業第1号だと思う」と言うのは、医療機器などを扱う琉球光和(那覇市)の秦一社長。

「ビブリオバトルはバリアフリーの格闘技。最近は仕事も娯楽も細分化され、専門性が高まって老若男女が一緒にできるものがない。その点ビブリオは、業種も年もベテランも若手も関係ない」

若手社員が中心になり、月1回開く。普段読まない分野にもチャレンジしてほしいと、毎回テーマが決められている。伊波由里絵さん(24)は恋愛のテーマで勝者になった。異業種のテーマで勝者になった桑木茉里南さん(25)は「最初は軽いノリでしたが、今では出るからにはチャンプ本を取りたいと欲が出てきました」と話す。

居酒屋で妖怪本バトル

ちょっと変わったバトルも繰り広げられている。

妖怪伝承スポットを訪ねたり、古書店を巡って妖怪に関する本を探したりと妖怪をこよなく愛するメンバーが、イベントの一つとして開く「妖怪ビブリオバトル」。実行委員の稲川綾乃さんは、ビブリオバトルの普及委員も兼ねている。

「妖怪は目で見えるものではなく本で知識を得ますから、妖怪の愛好家は読書好きが多い。ビブリオとも親和性がいいんです」

東京・高円寺の居酒屋まんまみじんこ洞で開かれた会をのぞいた。狭い店に20人ほど集まり、熱気がこもる。毎回偉人の名前が冠名に付けられ、今回は植物病理学者の白井光太郎杯。実行委員でイラストレーターの氷厘亭氷泉(こおりんていひょーせん)さん(29)が副賞の巻き尺を、式水下流さんが光太郎の胸像を手作りし、チャンプ本獲得者に贈呈するといった念の入れよう。

この日の最初のゲームで勝者になった氷厘亭氷泉さんは、「中学から妖怪に関心を持ち始めた。ビブリオでは、守備範囲にない幅広い本を知ることができるから楽しいですね」と話した。メンバーたちはグラスを片手に本を語り合い、夜遅くまで盛り上がった。

さてあなたなら、どの本に1票入れますか?

(ライター柿崎明子)

AERA 2014年1月27日号
 

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